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妹姉部屋
A HAPPY NEW YEAR...?*



「年明けはやっぱり姫始めだよね、姉さん」

「っふ、…」

くそ、何が大事な話がある、だ。
こんな滅多に来ない地下室にまで連れてこられたから可愛い妹がどれほど重大なことを言うのかと思っていたが、アルに易々と騙されたようだ。
此処に着くなり背後にまわられぐるぐる巻きにされた挙句、もう何十分もアルの舐めまわすような視線に耐えている。


「どう?」


一体何がどうなのか分からないが、口が塞がれているために尋ねることが出来ない。
仕方が無いので目で訴えてみる。


「ああ、そう言えば喋れないんだったね」

ごめんね、と一歩ずつアルが近づいてくる。
何だ、どうせ口を開放してくれるならもっと早くにしてくれればいいのに。


「んっ!?」


ぐいっと右手の親指と人差し指で顎を持ち上げられ、強制的に至近距離でアルと見つめ合わされる。
この距離なら暗くてよく見えなかったアルの表情がよく分かる。

てっきり開放してくれるものだと思っていたが、そこにあったのはただ口角をいやらしく吊り上げた艶美な表情だけだった。


「ん゛ぅっ…」

アルがこんな顔を見せるときはろくなことが起きない。
一刻も早く目線を逸らしたくて顔を背けようとするのだが、アルがそれを許さない。


「どう?」

また同じ質問を投げかけられる。
何回聞かれたって同じだ。アルが開放してくれるまでおれは答えられないのに。


「ぼく、姫始めって言ったよね?」

確かにそう言っていたが、一向に手を出してくる気配なかったじゃないか。

「さっきまで姉さんのことずっと見つめてたけど、姉さんはどう思った?」


「ぼくのこと欲しくならなかった?」


ねえ?と首をかしげさらに笑みが深くなる。
そんなアルの様子をじっと見ていると(というか、目が離せなかった)、やっと話せるように開放してくれた。


「これで喋れるよね」

「…」

「ね、ぼくが欲しくならなかったの?」

「……」

「言ってくれなきゃ何にもしてあげない」

「…べつに何もしてほしくない」


そう答えるとアルは沈黙した。
アルの威圧感に耐えられずに目を背けてしまったため
アルがどんな顔をしているのか見ることが出来ないが、少なくともこの雰囲気ではもうアルの顔に笑みはないだろう。





「…ふーん?じゃあ姉さんはこのままでいいってこと?」

「…っ、いい。」


…そう聞かれたて気付いたが、体が疼いて仕方が無い。アルに見つめられ続けていたときは緊張で気がつかなかったが。
しかしだからと言って、アルの誘導に従い自分から求めるのは嫌だ。
絶対に欲しいなんて言ってやらない。


反抗のつもりで睨みあげると、ひとつ大きなため息をついてアルが立ち上がった。


「そう。じゃあぼくちょっと出かけてくるから。帰って来たらまた聞いてあげる」

「なっ!おれをこのままにしていくのか!?」

「だってこのままでいいんでしょ?」

「っけど…」

じゃあいいじゃない、そう冷たく言い放ち、すたすたと出口まで歩いて行ってしまった。
腕も足も拘束されているために自力で此処から脱出することは出来ない。アルに拘束を解いてもらうしかないのに…。
言うか否かの選択に悩まされていると、アルはドアの前でぴたりと止まって振り返り、こう言い放った。


「ぼくが帰って来たときちゃんと言えたらお土産いっぱいあげるからね」

満面の笑み。語尾にハートマークでも付きそうなほどだった。


バタン、と音をたててドアが閉まった。





こんな一年の始まりなら、今年もおれにとってハッピーな年なんかにはならないだろう。

A HAPPY NEW YEAR...?



新年小説ということで振袖を意識してみたのですが…なにこれ?
な感じになってしまいました(;ω;)

そして寸止めな感じになってしまいましたが春梨仕様です

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