短編集
3-他side-


ああ、5年振りか。

やっと此処に戻ってきた。


ずっと俺が居なくて寂しかったか?


愛しい愛しい俺の“ラジエル”



****


カツカツ……

「まさか本当に貴方がこの学園に戻って来られるとは思いもしませんでしたよ。」

学園の生徒が授業で静まり返った廊下に大の男が二人並んで歩く。

「止めて下さい理事長。かつての先生に敬語を使われるのは、気持ち悪くて鳥肌が立ちます。」

かつてただの教師だったはずの彼が、理事長という所まで一気に上り詰めていた。


「……ははは。私が誰にも敬語を使うのは昔からの事でしょう。相変わらず毒な所は変わらないのですね。」

相変わらず、貴方のその笑顔は嘘くさいですね。

「お褒め頂きありがとうございます。」

皮肉にそう言えば理事長は気にする事もなく、そのまま足を進めた。


「ここが先生の担当するクラスです。不思議なんですがこのクラスには赤の他人なのに双子みたいに似ている子達が居ます。最初は間違えると思いますが、だんだん見分けられるようになりますよ。」


いや。どう見たって、似ても似つかないだろ。

皆が見分け付かないのが意味分からない。

それに5年も我慢した俺は偉いと思う。

理事長が教室の中に入ると、俺もその後をついて行った。


「皆さん。静粛に。今から新しくこのクラスを担当する方が来ております。この学園の卒業生でもあります。かつては私の教え子でした。彼の生活態度はとても素晴らしい者でした。生徒会長となり、今ある伝統も彼が造り上げた者です。少し毒はありますが、彼はこの学園に相応しいお方だと思います。それじゃあ高岡先生お願いします。」

滅多に姿を現す事のない理事長の姿を驚きつつも、隣に居る俺は誰だという目で見てくる。
途中で理事長の話を聞いてないのが分かった。

「皆さん。始めまして、本日付けからこのクラスの担任を勤めさせて頂く高岡俊介です。一つだけ皆さんにお願いがあります。」

俺を好意的な目で見る奴らは、大きく首を振った。

でもそんなものに興味はなく。
怯えた顔で見るあいつもどうでもいい。

俺に見えるのは

「…俺に逆らうなんて考えるなよ。それと俺のに手を出したら潰す。」

一生懸命涙をこらえようとしている、その姿だった。


「……しゅ…んに…っ!」

ああ、そんな可愛い顔で呼ぶなよ。



本当……






殺したくなる────





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