短編集
4
「……嫌だ。いきたくない!」
じりじりと近づく長身に生徒は、怯えた顔をする。
お前が行ったら逆効果なんじゃ。
「悪霊になってしまえば、二度とその姿には戻れんぞ。それでもいいなら好きにすればいい。ただそうなったら場合問答無用で…消す。」
「……っ!」
消すの部分がやたら、殺気がこもっていて、俺まで体が一瞬固まってしまった。
目の前で受けたら、本当に心臓止まりそうな程。
「ぼ、僕は悪霊なんかじゃない!」
そりゃあそうだろ。どうみても生きてんだし。
「……今はそうでなくても、お前は危険人物としてリストアップされている。」
なんだよ危険人物って。
あの生徒が悪さするような奴に見えねーんだけど。
「僕は何も悪い事してな…っ!!」
「本当にそう言えるのか?村井幸利。」
名前を呼ばれた瞬間、体がびくつき、涙目になる。
「違っ……助けっ…お願っ!!…」
「………っ!」
一瞬こっちを見た。
俺に助けろって言っているのか?
ああ、もう!
俺は正義とかそんなの持ち合わせてねーし。
助ける義理もねーけど。
ガシャンッ!!
あんな風に助け求められたら、逃げる訳にはいかないだろ。
「お前、いくらなんでもやり過ぎだろ。」
俺はフェンスをよじ登って、生徒を庇うように前に立った。
て、お前ら、よくこんな所で…。
一歩踏み外せば、あの世逝きだぞ。
「ふふふっ。ありがとう。“アキヒト”」
え…なんで俺の名前知って…
「危ない!!」
「えっ?うわああああ………あ??…」
突然後ろから突き落とされたと思ったけど、全く落ちていなくて。
でもさっきの落ちる感覚は何なんだ?
「お前は馬鹿なのか。仕事の邪魔して楽しいか?ん?逃げたけど、どうすんだ。お前。ん?」
怖い。とてつもなく怖い。
「…ごめんなさい…。」
いやマジで、目だけ殺せる。
目つき悪い俺が言うのも変だけど。
てか逃げたってなんだよ。
後ろに居るだろ。
そう思って振り返ったら
「え?」
あいつまさか落ちたのか!?
「はあ…。あいつは霊だ。それも凶悪な。」
は?…
「霊!?」
でも足、足あったぞ!!
てか凶悪って……。
「たくっ何の為に悪霊になる前の霊を強制送還してると思ってんだ。」
はあとため息をつく。
「お前いったい……」
「俺の名は、青珠(セイシュ)。またの名は、宮澤敬太。俺の仕事は悪霊もしくは、それになる前の霊を強制送還するのが仕事だ。」
宮澤敬太ってどっかで……。
「俺の秘密がばれたからには協力してもらわねばな?」
いや元からお前隠す気なかったじゃん!!
「ちなみに断ったらお前も強制送還するよ。」
ゾワッ!
ニコッと笑うこいつこそが悪霊なんじゃないかと思った。
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