短編集



ただ何となく何となくだ。

あいつが居ればと屋上に来ただけで、特に何もない。


「いないか…。」


そうだよな。そんなタイミングよく現れないよな。


千里の言う通り、俺はあいつに執着しているのか。


「…君はどうしてこっちに来たの?」


!!
誰も居ないと思ったから、背後からの突然の声に少し驚いてしまった。


「お前…」

振り向いたらあいつが立っていた。


「どうしてって…」


お前を探しに来たなんて言えねーし。


「な、何となくだ。」


俺がそう言えばきょとんとして、首を傾げる。


「現実じゃないのに?」


は?
なんか話噛み合ってなくね?
なんで屋上に来たか聞いてんだよな?


そう言ったまま黙り込むのを見て、ずっと知りたかった事を聞いた。


「なあお前名前なんて言うんだ。」


だが、首を横に振って教えてはくれなかった。


「……。」


あいつはそのまま何も言わず屋上から消えた。


初めて見た時も思ったが、誰かに似てんだよな。


「お前とあいつは同じだが違う。」

また突然に降り懸かった声に振り向いたら、知らない奴が居た。

二度目は驚かない。

一応175ぐらいある俺を軽々と越えた長身に、こいつもまた美形だと言われる分類に入るだろう。


その長身から、あの転校生を思い出したが、外見が全然違う。

「あーここ立入禁止だぞ。部外者は入ってくんなー。」


まあ俺も風紀員ていう名の部外者だけどな。


「お前とは違う。仕事をしに来た。」


ギロリ一瞬俺を睨みつける。
屋上に仕事てなんだよ。
何どうどうとサボってやがる。
俺も人の事言えねーけど。


「言っただろう。死後の世界は現実じゃないと。」


聞き覚えのある言葉に、何処で聞いたのか思い出していたら

奴はニヤリッと笑うと、フェンスに向かって走り出した。


「え?!」


その勢いのままフェンス飛び越える。

ちょっと待て、そんな簡単に登れるものなのか。

「何してんだ。危ねーだろ!」

一瞬落ちるのかと思った。
心臓に悪すぎるだろ。


「こっちの方がよっぽど危ないね。」

フェンスの向こう側で、ある方向を見つめる。

「…………っ?!」


その視線の先に一人の生徒が居た。

いつの間に!?
全く気配なかったぞ。


こっちの方が危ないってなんだ。


もしかしてあいつ、今から自殺しようとしている奴を止めようと?





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