記憶の中で
4-時雨side-
「誰だ貴様は。」
目の前の男にそう問い掛ければ、無表情だった顔を、ニヤリと面白そうに変える。
おかしい。
先程から、何か違和感を感じる。
「お前は、少し出来るみたいだな。さすがナイトと言ったところか。」
聞き覚えのある言葉に、疑問を感じた。
どういうことだ。
この学園のやつではない男が、どうしてそれを知っているのか。
それに、わらわがナイトだと言うのか?
「貴様は、この学園の生徒なのか?」
長身で少し長い紅色の髪を後ろでひとつに束ねている。
この男だったら、間違いなくこの学園で目立つはず。
「つまらない話はどうでもいい。黙って俺に着いてきてもらおうか。」
男の表情から何を考えてるのか分からない。
…分からない?
そうか。違和感を感じたのは“声”が全く聞こえなかったから。
何故だ。何故聞こえぬ。
「貴様に命令される覚えはない。」
“声”が聞こえない分、警戒心を強くしなければいけない。
この男は危険だと、体が反応している。
「怖いか?“声”が聞こえないのは。」
まるで全てを知ってるかのように言う男。
「わらわを知ってるのか!?」
「ぁあ。お前の母親の事もな。」
わらわのお母様の事を知っているやつは居ないはずだ。
ならばただのハッタリか。
そう思ったが、次の言葉でハッタリじゃないことが分かった。
「大好きなお母様を見ずからの手で始末しちゃあ世話ないよな。その長い髪も、お母様に見立ているのか?」
それは、誰もしりえないわらわの過去。
何故この男が知っているのとか、そんなものは気にしてられない。
「何を企んでいる。」
「窓の外見てみろよ。」
わらわの質問に、全く関係のない答えが返ってくる。
「なっ!」
男の言われた通り外を見ると、信じられない光景が目に入った。
何故あんなにも人が倒れているんだ。
「超音波系。全ての人間に流した。少しなら人間に害はないが、長時間浴びたり、強烈な超音波を浴びると、頭の中が破裂する。でもまあ安心しろ。死なない程度にしてあるから。」
「ならば何故わらわに何も起こらない?」
全てて言うのなら、どうしてわらわに。
「人間ではないからだ。」
その言葉が酷くわらわの心をつく。
──…バケモノ!!
それはけして変えられない事実。
窓から見た景色は
──…少し空が歪んで見えた。
[*過去][未来#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!