記憶の中で



「なあ。何処に人が居ると思う。」

鞘の問いに誰も答えない。

着いた場所は、人影もなく、今にも崩れ落ちそうなレンガの家が点々と建っている。


ふと横の看板が目に入る


「『ジョーカーにより立入禁止』?……ジョーカーってあのジョーカーか!?」


バーラントの彼女達に、呪いをかけた張本人…らしい。

彼女達がそう言っていたから。

──…私達はジョーカーによって洗脳されていたのです。


もし本当にそうなら、何故そんな事する必要があったのだろうか。


「着いたと思ったら、問題が起きるな。」

時雨先輩は、何故か納得したように、入口の前に立つ。


「入っちゃおうぜ!どうせ立入禁止なんて大した事ないって!」

鞘が率先して町に入ろうとした瞬間、テイラーさんに止められる。


「待て。中に誰かいる。」
「ああ。声も聞こえる。」


テイラーさんと時雨先輩が何かに気づいたようだ。


だけど俺達には、何も見えない。

本当にこんな町に人が居るのだろうか。


「…っ!!!風壁<ブリーザウォール>!!」


ゴンッ!!
ブワワワワワッ!!


リュシアンが何かに気づいたらしく、唱えた瞬間何かと衝突して、強い風が起こる。

っ!風が強過ぎて目が開けられない。


「誰だ!!」


風が静かになった頃、テイラーさんがそう叫ぶと中から人が現れた。


「君達こそ誰?ここは君達のような人が入っていい場所じゃない。さっさと帰ることだね。」

少し長めの前髪で目が隠れていて、表情がよく分からないけど、歓迎されてないのは分かった。

帰れと言わんばかりに、その青年はキッと俺達を睨みつけた。
…気がする。


「なっ!ここまで来て黙って帰れってのかよ!俺達はトランプを持つ者を探しに来たんだ!」


鞘が興奮したように言うが青年は冷静に考える。


「トランプ?」
「ああ。わらわ達はここにトランプを持つ者が居ると聞いた。もしかしたら味方かも知れないからな。」


時雨先輩が、そう答えると青年は、小さくため息をつく。

「…君達もか。なら尚更、帰った方がいい。敵であろうが味方であろうが、僕は参加するつもりはないから。」


その言葉に皆反応する。
持ち主がこんなすぐ見つかるなんて。

……君達も?
前も誰か来たのだろうか。


「お前が持ち主!?マークは!?」


鞘がそう問い詰めると

「君に教える義理はない。」


青年はそう言ってそっぽを向く。


「なっ!!」
「まあまあ、落ち着きなよ鞘っち!」
「離せっ!!」

それがカンに障ったのか、今にも暴れだしそうな鞘をリシュアンが必死に止める。


というか立入禁止なはずなのに、何故彼は中に居るのだろうか。



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あきゅろす。
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