記憶の中で



…………。


…………。


……まだですか?


「はあはあ…っ。す、すぐって全然すぐじゃねーじゃんかあ!」

ドサッ

鞘がそういうとそのまま、休憩とばかりに座り込んだ。

俺、鞘、時雨先輩に、リシュアンとテイラーさんと一緒にルセイチという小さな町に向かっている所。

リンも無事元気になったみたいで、パーヴェルさん達と一緒にお見送りしてくれた。


ルセイチにトランプを持つ人が居るらしい。

それは敵か味方か分からないけど。

目的地がないよりマシだ。

パーヴェルさんは、南に行けばすぐだと言ったが、かれこれ5時間ぐらい歩いてんじゃねーか?いやマジで。


「……ね?俺っちの気のせいかな?さっきここ通った気がする。」

リシュアンの言葉に皆、反応し周りを見渡す。


確かに見に覚えがあるような…ないような。

でも一本道しかないのに、どうやって迷うんだ?


「気のせいじゃないな。完全に罠にかかってる。」


テイラーさんは、冷静にそう言って、時雨先輩に近づく。


「協力頼む。」
「ああ。」


協力?
時雨先輩は分かったみたいけど、一体何するんだろ?


「皆静かにしてろよ。歩音<ノイズウォーク>!!」


テイラーさんが唱えたと同時に、時雨先輩は耳を澄ませる。


「こっちだ。」


そう言って時雨先輩が指した方向はさっき通った道。


「ええ〜戻んのかよ!」

鞘がすくっと立ち上がると、渋々逆方向に向かう。

とりあえず時雨先輩の指示に従おう。

「次はこっちだ。」

10分くらい歩いた所で、また指を指す先輩。

でも指した道は

「そっちさっき通って来た道じゃん!また逆戻りすんのかよ!」

鞘の言うとおり、時雨先輩はまた来た道を指していた。

どういう事なんだろ?

「鞘っち。ここはハーヴェイっちと時雨っちに任せれば大丈夫だから。」

リシュアンに言われても、まだ理解出来ない鞘にテイラーさんは

「俺が普通では聞き取れない音で、正しい道にそれを流し込み、密がその音を聞いて、正しい道を進むって事だ。分かったら黙って、ついて来い。」

そう言って、時雨先輩が指した道を歩きだした。


進んでは戻り、進んでは戻りを繰り返す。


そして


「ついたーーー!!」


ルセイチが見えてきた。


少し暗くなり始めてる。早いとこ宿取らないとな。


この時はまだ誰もルセイチの異変には気づかなかった。



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