記憶の中で
2
…………。
…………。
……まだですか?
「はあはあ…っ。す、すぐって全然すぐじゃねーじゃんかあ!」
ドサッ
鞘がそういうとそのまま、休憩とばかりに座り込んだ。
俺、鞘、時雨先輩に、リシュアンとテイラーさんと一緒にルセイチという小さな町に向かっている所。
リンも無事元気になったみたいで、パーヴェルさん達と一緒にお見送りしてくれた。
ルセイチにトランプを持つ人が居るらしい。
それは敵か味方か分からないけど。
目的地がないよりマシだ。
パーヴェルさんは、南に行けばすぐだと言ったが、かれこれ5時間ぐらい歩いてんじゃねーか?いやマジで。
「……ね?俺っちの気のせいかな?さっきここ通った気がする。」
リシュアンの言葉に皆、反応し周りを見渡す。
確かに見に覚えがあるような…ないような。
でも一本道しかないのに、どうやって迷うんだ?
「気のせいじゃないな。完全に罠にかかってる。」
テイラーさんは、冷静にそう言って、時雨先輩に近づく。
「協力頼む。」
「ああ。」
協力?
時雨先輩は分かったみたいけど、一体何するんだろ?
「皆静かにしてろよ。歩音<ノイズウォーク>!!」
テイラーさんが唱えたと同時に、時雨先輩は耳を澄ませる。
「こっちだ。」
そう言って時雨先輩が指した方向はさっき通った道。
「ええ〜戻んのかよ!」
鞘がすくっと立ち上がると、渋々逆方向に向かう。
とりあえず時雨先輩の指示に従おう。
「次はこっちだ。」
10分くらい歩いた所で、また指を指す先輩。
でも指した道は
「そっちさっき通って来た道じゃん!また逆戻りすんのかよ!」
鞘の言うとおり、時雨先輩はまた来た道を指していた。
どういう事なんだろ?
「鞘っち。ここはハーヴェイっちと時雨っちに任せれば大丈夫だから。」
リシュアンに言われても、まだ理解出来ない鞘にテイラーさんは
「俺が普通では聞き取れない音で、正しい道にそれを流し込み、密がその音を聞いて、正しい道を進むって事だ。分かったら黙って、ついて来い。」
そう言って、時雨先輩が指した道を歩きだした。
進んでは戻り、進んでは戻りを繰り返す。
そして
「ついたーーー!!」
ルセイチが見えてきた。
少し暗くなり始めてる。早いとこ宿取らないとな。
この時はまだ誰もルセイチの異変には気づかなかった。
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