記憶の中で
心の声
───Prologue─…
わらわ小さいながら他人とは違う事を知ってしまった。
人の心は醜い。
だけど一番醜いのわらわだ。
人の心の声が聞こえるのだ。
どんなに耳を塞いだって、頭の中でずっと聞こえてくる。
どうしてわらわに、そんな力があるのか、分からない。
嬉しいなんて思ったことも、よかったなんて思ったことも一度もない。
このせいでわらわ捨てられたのだから。
だけど寂しいなんて、悲しいなんて思わなかった。
わらわずっと一人だったから。
そしてこれからもずっと…。
────…
「おい。ちょっと来い。」
珍しく、わらわに声をかけてきたクラスメイト。
このクラス、いやこの学園でわらわ浮いてる存在。
もちろん、悪い意味で。
そんなわらわに声をかけるのは珍しい。
「わりーな。でも今じゃねーと駄目なんだよ。」
【ちっ…なんで俺が、こんな気持ち悪いやつと】
喋ってる言葉とは裏腹に、ものすごく嫌そうにする。
わらわとて関わりたくない。
「なんだ。わらわに何かようか?」
【田辺勇気ある〜。俺じゃ顔も合わせたくね。】
【どこの時代のやつだよ。あはははは。】
【マジ変な喋り方だし、気持ち悪い。】
【うわっこっち見た!きもっ】
【いいぞー田辺ーもっとヤレー】
次々とクラスメイトの心の声が聞こえる。
もう全部聞こえてるのだから、普通に喋ればいいのに。
まぁわらわにこんな力があるなんて誰も知らないだろうが。
もっともそれが知られた場合、わらわもうここから追い出されるのだろう。
うるさい教室を出て、空き教室に連れてこられ、何か言おうとしているクラスメイト。
【くそっとんだ罰ゲームだ。】
罰ゲーム?
「ちっ俺と付き合え。」
それはとんだ罰ゲームだな。
「断る。わらわをゲームに使うな。」
【はぁ?こいつふざけてるのか。】
ふざけているのは貴様だ。
「お前に拒否権ねぇよ。」
【どうせ一週間の辛抱だ。】
そういって、一枚の写真を見せられた。
「分かった。」
別にもう写真なんてどうでもいい。
ただ何もかもめんどくさいのだ。
人の心はやはり醜い。
わらわの声は誰にも聞こえぬのか。
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