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くま5
あれから。
なにをどうやってこなしたかもわからないけれど、どうにかこうにか早めに仕事を終わらせた。
高野さんとは、必要最低限のこと以外で言葉を交わさないようにした。
そして今。
俺の足は、いつものインターネットカフェではなく、現在住んでいるマンションを契約した会社へと向かっていた。
そう。
引っ越すことにしたんだ。
高野さんが隣に住む、あの部屋から。
やっとわかったんだ。
あのままあそこに住んでいたら。
あそこにいたら。
高野さんは、きっと、ずっと、俺を諦めないんだろう。
だったら態度で示すしかない。
行動を起こすしかない。
まずは、プライベートを完全に断ち切ることからはじめるんだ。
職場でしか会わない環境を作って。
ただの上司と部下に戻って。
10年前の初恋ことなんか、忘れてしまえばいい。
今住んでいるマンションよりは少し質は落ちるけれども、何駅か分会社へと近づいたところにあるマンションに空きがあるとのことだった。
そこの契約会社ではサービスとして、入居初月の家賃は無料としているそうで。
中途半端なタイミングでに引っ越す身としては、家賃を重複払いしなくていいのは非常に有り難い。
俺はそのマンションに即決した。
訳ありな様子を感じとったのかもしれない。
親切にもその人は明日にでも荷物を搬入できるようにと、運送業者まで紹介してくれた。
あれよあれよという間に、明朝10時からの荷出しが決定していた。
住民票を取りにいくのが間に合わないと言えば、今月中に郵送してくれればいいと言ってくれて。
正直こんなに上手くことが運ぶだなんて思ってなかった。
今度また住宅について相談するときには、是非ともこの会社さんをご贔屓にしたいと思う。
そんなこんなで。
月休6日のうち、貴重な1日の明日が引越しに当てられることとなった。
明日荷出しを行うということで、今日は一旦帰って出来るだけ荷物を纏めておかなければなければならない。
嫌だけど。
すっごく気は乗らないけど。
これで最後だと思えば耐えられる。
その日俺は、4日ぶりにあのマンションに帰ることとなった。


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