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下心6
高野さんはひとつ舌を打ち、
素早くジャケットを脱いで俺にかけた。
そっか。
そういえば。
俺、
ほぼ全裸だったよ。
まぁ俺、男だし…いや、でも!
ていうか!
横澤さんの派手な登場に気をとられてたけど。
これって実は。
ある意味で一番見られたくない人に、
一番ヤバイ場面を見られたってことにならないか…?
「何しに来た、横澤」
ここでやっと横澤さんの方を見た高野サン。
不機嫌オーラがだだ漏れだ。
「それはこっちの台詞だ。何してんだお前」
地を這うような声とは、
まさにこのことである。
高野さんに答えてるように見せかけつつ、
明らかに俺に向けられてるその言葉。
含まれたトゲっぷりが尋常じゃない。
ウニか、
フグか、
ハリネズミか。
そんな攻めぎ合いだ。
……って、
何考えてんだろ。
しっかりしろよ、俺。
横澤さんなんかに、
飲み込まれる、な。
「何って、」
横澤さんと俺との、
言葉なき攻防を察することはなく。
高野さんが口を開いた。
「ナニに決まってんだろ。見てわからないか?」
あぁ、
そっか。
高野さんて、
多分ちょっと天然さんなんだ。
そんで、
激しくマイペースで、
あんまり空気読めない子なんだ。
知らなかったなぁ。
知りたく、
なかったよこういう形では。
よく見てよ高野さん。
今の横澤さんの顔。
確実に何人か殺ってる顔だよ。
それも多分、
アンタに近づいた人ばっか。
もうやだよ俺。
そのうちに絶対ころされるよ。
なんだって火に油、
注いでくれちゃったかなぁ。
「俺が聞いているのは理由だ、政宗」
苛立ちをたっぷり含んだ声。
気に入らない人間へ向ける視線の厳しさ。
愛する者への止まらぬ追及。
考えれば考えるほど。
この人たちはよく似ている。
似すぎているんだ。
違うのは。
気持ちの向かうベクトル、だけ。
横澤さんの言葉に。
高野さんは。
驚くほど鋭い目付きになった。
普段見ないそれは、
俺の背筋に得たいの知れない悪寒を走らせる。
「好きな奴を抱くのに理由はいらない」
「けど政宗、そいつは!」
「帰ってくれ、横澤」
淡々とした口調で投げつけられる、
あまりに一方的なことば。
「お前には関係のないことだ」
それは多分。
今の横澤さんに対して、
一番言ってはならない一言だった。

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