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下心4
高野さんは、
前ほど俺の部屋に来なくなった。
かと言って会う頻度が減ったわけじゃない。
その分だけ、
俺が高野さんの部屋に行くようになった、ってことだ。
前みたいに高野さんが俺の部屋に来るのは、
晩ご飯を一緒に食べたら仕事とかしに自分の部屋に戻るって日で。
高野さん、が。
高野さんの部屋で俺を待っている日は。
そういうこと、
シたいと思ってる、って日で。
流されるままそういう行為を重ねる自分に、
どうしても耐え切れなくなって。
自分の部屋に直行したこともあった。
けれどそれは先延ばしにしかならない上に。
後日部屋に押し入ってきた高野さんに、
もっと酷い目に合わされるって。
文字通り身をもって知ることとなった。
それからは。
とりあえず晩ご飯はご一緒させて頂いて。
何かしら理由をつけて帰るように、
してたっていうのに。
「律」
いつもより少しトーンを下げた声で呼ばれる名前。
耳の中で低く響いて。
おれが必死になって回す思考回路を、
ことごとく焼き切ってしまう。
「だ…ダメです、今日は、おれ…」
言わなきゃ。
何かもっともらしい理由をつけて、
部屋に帰らなきゃ。
でないと。
高野さん、に。
「今日は部屋でやること、特にないだろ?」
もたもたしてたら、
すかさず先手を打たれる。
…まずい。
「そんな、こと」
「ここ数日は会社でやり切れる仕事しか、回してない筈だ」
絶句だった。
確かにここ数日、なんか仕事ラクだなとは思ったけど。
そこまで手まわしてくるなんて。
ていうか。
いいのか丸川。
こんなやつ編集長にしちゃって。
たった今、
職権乱用を裏付ける発言があったぞ。
「ま、そういうことだ」
主語も道理も、
なにもない台詞とともに。
高野さんがシャツの釦に手をかけてきた。
「や、めて下さいっ、高野さん!」
高野さんの手首つかんでも動きを止めるには到らず、
ひとつひとつ。
釦が外され、
肌が外気に晒されていく。
「無駄な抵抗はやめて、大人しく抱かれろ」
「いや、ですって!今日は、ほんとに…!」
今日は、
というか。
できるならずっと。
こういうこと、したくない。
したくない、のに。
「もう、」
「我慢できない」
高野さんは、
俺の手首つかんで。
布の上から、
高野さんのそこに触らせたんだ。
「っ、!」
あつ、い。
服ごしに触れた高野さんは、
あんまりあつくて。
高野さんの言葉が、
嘘なんかじゃないって。
おれが、
おれのことが、
どんなに欲しいのか。
わかって、
しまったおれは。
それ以上に拒み続けることが、
出来なくなってしまったんだ。

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