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お手紙6
玄関を入ったところで、体の力が抜けた。
電気をつける余裕もなかった。
暗いままも怖かったけど。
何も見えないままのほうが、
暗いままのほうが、
俺の姿を、隠してくれるような気がして。
膝を抱え、顔を埋める。
このまま。
こうして、寝ちゃったりして。
起きたら夢だったりしないかな。
してくれない、かな。
そんな。
現実逃避じみたこと。
考えてた、時だった。
がちゃり。
ノブが回る音がした。
ばっ、と顔を上げる。
まさか。
まさか。
ばくばくと、
ドアを見つめる。
左手は床について。
いつでも、逃げれるように。
逃げれるように。
見つめた先。
ドアが開く。
光と共に、見えたのは。
「何してんだ、お前」
高野さんの、顔だった。
ほっとして力が抜ける。
よかった。
あぁ、でも。
高野さんと会わないでいられたのは。
ほんの数分だったなぁ。
そうまで考えて。
はたと気づく。
この状況、
なんて言い訳したらいいんだろ。
考えて、
考えて、
何も浮かばなくて。
どうしよう。
どうしよう。
そしたら。
高野さんが、俺に近づいてきて。
ぽん。
頭に、手を置いた。
「ご飯、冷めるから。お前の部屋に行こう」
そう言って。
くしゃっと、頭を撫でたんだ。
あぁ。
どうして。
どうしてこの人に会いたくないなんて。
思ったんだろ。
高野さんは、優しい。
優しいひと、なんだ。

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あきゅろす。
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