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お手紙4
その日。
俺は後日会議で使用される企画書を作っていた。
作って、いるのだが。
「はぁ…」
進まない。
アンケートの内容が、全然頭に入ってこない。
情けない話だけど。
たった一言しか書かれていなかった昨日の手紙が、予想以上にこたえているらしい。
誰かに恨まれているとわかる。
それが、こんなにもストレスのかかることだったなんて。
あーもう、
今は忘れろよ。
考えたって、しょうがないだろ。
「おい」
「おい、小野寺」
仕事に集中しろよ、自分。
「小野寺!」
「は、はい!」
声を張り上げ名前を呼ばれる。
背後から不機嫌オーラが全開で伝わってくる。
やばい。
高野さんの声、全然聞こえてなかった。
「何ぼーっとしてんだ、一回で返事しろ!」
「すいません!」
最悪だ。
なにやってんだろ、俺。
「この書類、コピーしてきてくれ」
「あ、はい、わかりました」
高野さんから書類を受け取り立ち上がる。
早速コピー機へと向かおうとすると。
「待て」
「はい、」
なんだよ。
用件はいっぺんに言えよっ。
とか思いつつ、高野さんの方に向き直ると。
高野さんは自分のサイフから千円札を1枚取り出して。
「今日は暑いから、帰りに皆の分のコーヒー買ってこい」
その言葉を聞いた他の人達が、少しだけ沸き立つ。
「さすが編集長」
「どしたの、今日なんか太っ腹じゃない」
「うるせぇ、お前らさっさと仕事しろ」
本当に
こんなこと。
普段はあんまりしない人なのに。
なんだよ。
このタイミングで、
こんなことされたら。
勘違いしてしまいそうに、なるじゃないか。
さっきまでのもやもやが嘘のみたいだ。
心穏やかに印刷を済ませた俺は、
みんなの分のコーヒーを買うべく自販機まで来ていた。
「えっと…」
確か木佐さんがカフェオレで、
美濃さんはカフェオレのシュガーレスバージョンで、
羽鳥さんと高野さんがブラックで…
うーん
俺は今日、何にしようかな。
ブラックでしゃきっとするのもいいけど、
甘いのにして頭働かせたい気もする。
よし、
俺も木佐さんと同じのにしよう。
ガコン、ガコンと。
最近の自販機は一回一回取り出さないと買えないのが面倒くさいんだよな、なんて思いながら。
自販機と格闘していた時だった。
なんだろう。
なんか。
視線を感じる、気がする。
気のせいかも。
いや、でも、
これ、は。
振り返ろうか。
いやでも、気のせいかもしれないし。
気のせい。
じゃなかったら、
どうしようか。
どうしよう、と。
迷いながら、買い続けた。
その。
何とも言えない、不快感は。
俺がコーヒーを買い終えるまで、続いた。

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