(考え中…) 小野寺律、14歳。 1か月前に中学3年生になった。 一般的には来年に高校受験を控え、 ピリピリしててもおかしくない年代だけど。 俺が在籍してるのが中高一貫校で、 それなりの試験をクリアすれば大体はエスカレーター式に高校生になれてしまうってこともあって。 クラスの雰囲気も去年と大した変わらず、 皆全力で中学3年生を謳歌しにかかっている。 ちなみに。 俺の成績は5クラス155人中71番目。 辛うじて真ん中よりちょっと上くらいな、 ごくごくありふれた平凡な学生、である。 少々非凡なところを挙げるとするならば。 クラス替えから1カ月経った現在も特定の友達を作ろうとせず、 休み時間はひたすらに本を読んだり窓の外を眺めたりして過ごしたり。 花のお弁当タイムはするりと教室を抜け出て屋上に向かったり。 授業中に当てられて俺が話し始めたり、 班学習なんかでグループ分けが始まったりすると、 そこはかとなく微妙な空気がクラスに漂ったり。 そんな。 どのクラスにも一人はいるような、 大人しくて、 何考えてるかわからなくて、 非常に扱いにくい一匹狼ちゃん。 このクラスにおける俺の立ち位置はまぁ、ざっとこんなところ。 この学校に入学してから2年間ひたすらにポジションを独占し続けてきた俺だけれど、 なんとびっくり。 このクラスには、 一匹狼が、2人存在する。 1人はもちろん俺。 もう1人、は。 「………」 一番後ろの窓際の席で。 かつかつと小気味いい音を立て、 教科書片手に構えた先生が黒板に書きあげていく数式を。 集中力なくぼんやりとノートに写す俺のひとつ前の席。 授業中なんてことおかまいなしに堂々と、 机に突っ伏して睡眠貪ってる男の背中が、目に入る。 このクラスにおけるもう一人の一匹狼。 現在進行形で中学3年生を留年中の、 嵯峨政宗の背中、を。 これまたぼんやりと眺める俺は、まだ知らなかった。 何度も言うけれど授業中にも関わらず、 目の前ですーすー寝息立てちゃってるこのミステリアスな男によって。 平凡にノーマルを極めた俺の人生が、 全力でかき乱されることになるだなんて。 [戻る] |