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無いものねだり





「…ふと、疑問に思ったのだが」

「へ?」



それは君からの突然の質問。


君は時々、そんな疑問を口にする(実際いつも考えているのかもしれない、言葉に出すのが気紛れなだけで)


「例えばこの暑さだ」

「あぁ、今日も炎天下だネェ、30℃だって…」

幸いにも今は部屋の中…故に直射日光を浴びることはないにしろ、この古城にはクーラーなんて現代的な装置は備わっていない。

『あの人工的な風は、あまり好かない』

と、そういった君の意見でクーラーは付けてない。
暖房はあるのにね…

それはきっと寒さに弱い君だからかな。


「そうだ、今日だって異常な程の暑さだ。それなのに冬場はどうだ?“こんな寒さが早く終わって暖かい季節が来ればいいのに”と嘆いていた」

「んー…まぁ、確かに」

僕はどっちかって言うと暑いのより寒いのの方が好きだケド。


「だがいざこんな風に夏が来てみたら、早く涼しくならないか、と思う始末だ。なんと勝手なのだろう」

「まぁ、それは所詮無いものねだりってやつだヨ」


人間も、妖怪も、きっと感情を持つ生き物はみんなそう。

だって欲張りだから。



「つまりは夏は“冬の方がいい”と思い、冬になったら“夏は良かった”などと思うわけだろう?」

「ま、毎年みんなそう思って過ごしてる人が多いんじゃナ〜イ?…ってゆーかそれなら年間通して過ごしやすいのは春か秋だよネ。
あ〜、でも僕は秋のが好き☆」


なんていってもハロウィンは一大イベントだからサ。


腕を組み直し、こちらを見据えるユーリ。
いつでも涼しそうな表情を浮かべてはいるけど、この暑さで少し、苛々しているのが見て取れた。


「では仮に年中秋だったとしよう。そうしたらそうしたで今度は“飽きる”わけだ」

「確かにね〜」

「最適な環境であったとしても、それに慣れてしまえばつまらないものになってしまう。安定していれば刺激を求め続ける」


「…」

「結局は、満足する事など無いのだ。常に、命あるものは変化を求め追い続ける」


あぁ、なるほどねぇ…



僕は、にっこりと笑んだ。


「大丈夫。僕は今の状態に満足してるし、何処かへ行こうだなんて思ってないヨ?」


つまる所、君は不安だったんでしょう?

変化を恐れる君。
でも安心してよ。
僕だけはね、変わらないから。


「……っ、暑い!喉が渇いた」

見透かされた事が悔しかったのか、君は少し恥ずかしそうに横を向き、ソファへ座り直した。


くすっ、と自然に笑みが溢れてしまった。

「冷たい飲み物淹れてきてあげる。ね、たまにはアイスティーなんてどう?」


「あぁ、頼む…」

そーゆう所は、素直。


「ねぇユーリ」

「…なんだ」


「人はより良い環境をいつだって探すのかもしれないけど、」




――どの季節であっても君と一緒に過ごせるなら、僕は幸せ、だヨ―――















「…〜〜ッ!!」

ばか、


そう言った君に物を投げつけられる前に、ヒヒッと何時ものように笑いながらドアの向こうへと逃げた。























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久々の更新スマせん○≡rz

なんかこういう無味乾燥だけど微かに甘い…みたいな感じの文を書きたかったのですヤッホォーイ


(09'7/30)

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あきゅろす。
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