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就活事情




「えっ!?二人とももう就職決まったの!?」

「おー、卒業もままならないお前とは違うからな」

「な…何よそれ、だって皆大変そうなのに二人とも全然そんな雰囲気なかったじゃない」

「だって数社受けただけで全部内定とれちゃったんだもん。第一志望のとれたら他必要ないじゃん」

「ちょっと恵!どう思うこの不真面目さっ!?」

「……雅則のそういうところに関してはもう何も言わないよ」

「えー何でー?」

「大学入試の時もそうだった。前日特に勉強するわけでもなく首席で入学」

「うっ……やな奴だ…」

「そういう恵だってほとんど就活してねーじゃん」

「まぁ…ね」

「何でそれで決まってるのー?」

「……バイト先の社員さんが一人寿退社することになって。繰り上がれただけだよ」

「ずーるーいー」

「へー寿退社か。いいねぇ」

「え?いい?男の寿退社だよ」

「へ?」

「え?何それ」

「主夫になるんだって言ってた」

「……誰だよ」

「花村さん、だけど……覚えてる?」

「あー、何となく」

「私知らないー」

「そりゃそうだろ……しかしこのご時世に主夫って、共働きじゃなくていいのか?あそこ結構給料いいのに」

「あーどうなんだろ」








「っていう話を友人としてたんですけど、共働きじゃなくて主夫になって生活大丈夫なんですか?」

「あーそれは大丈夫。相手キャリア官僚だから。稼ぎ、オレより良いの」

「……すごいですね」

「それに専業で主夫やるの一時で、別の仕事探すつもりだし」

「え?」

「ほら、だって僕たち一般市民のために頑張って働いてくれてるんだよ。疲れて帰ってきた時に温かいご飯で迎えてあげたいじゃない。でもこの仕事って不規則になりがちだし、だから別の仕事探そうと思って。少しでも長く一緒にいたいしさ」

「凄く、大切にしてるんですね。奥さんの事」

「ふふ。ね、馴れ初めとか聞きたいって思わない?」

「……え?」

「聞きたいよね?ね?」

「……お願いしてもいいですか?」

「もちろん。相手はね、高校時代の後輩だったんだけど、当時は特に親しくしてたワケでもなくて、卒業してからはずっと連絡もとってなかったんだけど……」







「ってな感じで延々とのろけを聞かされました」

「お……お疲れ様」

「キャリアウーマンかー、かっこいいな!華江と比べ物にもなりやしない」

「ちょ、ちょっとー比較なんかしないでよ!」

「だから比べらんないって言ったんじゃん」

「それはそれでなんかムカつく……」

「けどそっかー本当に辞めちゃうんだ。もったいないなー。あの人確か仕事早かっただろ?」

「うん。本当にすごいよ。休憩時間だけじゃ足りないって、仕事中ずっとのろけながら作業してた」

「うーわー」

「何で話ながら別のコトできるんだろ……?」

「え?それくらいは普通だろ?」

「…………私、雅則のそういうところに嫌い」

「……同感。だから一緒に勉強したくないんだよ」

「なっ、仲間外れにすんなよ!」

「それはそうと、恵、結局帰るまでずっと聞かされてたの?」

「……違うよ。終わった後もまだ足りないって、居酒屋に連れてかれた……」

「うっそれは……」

「おかげで相手の人に会ってもいないのに、詳しくなっちゃったよ……」

「オレだって恵のコトに関してならいくらでも語れるぞ」

「……やめてよ。鬱陶しい」

「…………(私もって言わなくてよかった)」

「あれ?華江、どうかした?」

「え?……あ、ううん。何でもないよ」

「やっぱ結婚式とか盛大にやんのかな。参考までに聞いてみたいな」

「参考って、予定でもあんのー?」

「それをお前が聞くのか?」








「……って話をバイトのコとしてた」

「……先輩」

「ん?」

「……一つ、聞いてもいいですか?」

「何?」

「その…誰と誰が結婚するんですか?」

「君と僕が」

「…………」

「どうかした?」

「えっと……」

「うん?」

「あの……日本の法律では、男同士だと結婚、できないんですが…」

「知ってるよ?」

「……えっと?」

「けど、それくらいのつもりで一緒に暮らそうって言ったんだよ。幸は違った?」

「違くは……ないです」

「幸」

「…はい」

「好きだよ」

「…………はい。―――っ〜何かもう本当にスミマセン!」

「えー?何で謝るの?」

「その…オレなんかのために仕事まで辞めちゃって…」

「それは僕が決めたコト。そうしたかったんだから気にする必要ないよ」

「……先輩」

「ん?」

「…………好きです」

「ふふっ、知ってるよ」





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