……………5
それからと言うもの、雅則とはよく話すようになった。向こうからよく話しかけてくるせい、と言うのもあるけど嫌ではなかった。
むしろかなり楽しい。
理由は私たちの会話の内容にある。話題に上がるのはほとんどが彼、恵に関することなのだ。
よく話題がつきないなと思うほどに恵の話をしている。何て言うか軽くファンクラブみたいになってしまってる。
けど、当たり前と言えば当たり前なのだが、雅則の方が詳しいし思出話がたくさんある。私は話を聞くことの方が多かった。
「………何か、いいよね」
「何が?」
「………雅則」
「あぁ、うん。いいやつだよ」
あっさりと肯定した彼に、軽く苦笑する。
確かにいいやつだとは思うけど、今のはそういう意味ではない。恵とすごく仲がよくていいなといったつもりだった。訂正はしないけど。
そう言えば、彼はあまり雅則のことを話題にしない。ここらへんからも温度差を感じる。雅則は両想いだって言ってたけど、一方通行に見えて仕方がないんだよな。
………雅則から親友の座奪えるかな?
「………華江?どうかした?」
あまりにじっと見つめて、考えにふけっていたせいで彼に怪しまれた。
「ううん。何でもないよー」
ごまかし、ノートに視線を戻すが、多分ごまかしきれてないよな。別に構いはしないけど。追求されることはないから。
彼と一緒に勉強して、おしゃべりして。雅則と一緒に遊んで、彼の話をして。とても楽しい日々だった。二人ともいい友達だと思っていた。
そう思っていたのは、私だけだった。
「なー華江ー」
「ん〜?」
「付き合ってー」
「えー付き合うって今度はどこにー?」
面倒くさいなぁと思いつつも、一応きちんと答えると、雅則は腹を抱えて笑いだした。
何故?
「……大丈夫?なんか変なもん食べた?」
「だ……大、丈夫……てか違う。意味が違うから」
「……………?」
わけがわからない。
雅則はある程度笑いが収まると目尻の涙をぬぐいながら顔をあげた。
「あーおかし」
失礼なやつだな。
「付き合てっていうのは、オレとお付き合いしてって意味」
「……?付き合いならもうあるよね?」
「そーじゃなくって」
なおもおかしそうにしている雅則に眉をひそめると、穏やかな笑みを浮かべられた。
「友達としてじゃなくって、恋人としてのお付き合い」
「……………………?」
意味が、全く、わからないのですが……
「…………何か、愛の告白に聞こえるんだけど?」
「聞こえるも何も、実際そうだし」
「はぁっ!?」
「え〜何でそんなに驚いてんの〜?好きだよ〜って何回も言ってたのに」
言ってた。確かに何回か言われていたけどもっ!
「け……恵に対するのと同じ好きだと思ってた」
「同じだって」
「ん?」
また訳がわからなくなってきた。
「男の中での一番が恵。女での一番が華江」
「……そういうもんなの?」
「おう。華江、今付き合ってる奴いないんだろ?」
「う、うん」
「オレのこと嫌い?」
「嫌いではないけど……」
確かに、好きと言えば好きなのだけれど、それは友達としての好きなわけで。
「恋愛感情としては好きと思ってないよ?」
「別にいーよ。付き合おうよ」
「……そんなんでいいの?」
「おぅ、付き合ってる内に好きになってくれればいいよ。それまで待つし」
「んー……なら、よろしくお願いします?」
「よろしく」
何だか、よくわからないまま押しきられる形で付き合うはめになってしまった…気がする。
恵に付き合うことになったと報告したら、良かったねと言われた。
「……何か、あまり驚いてないように見えるんだけど」
「だって知ってたし」
「えっ?何を?」
「雅則が華江を好きだって」
「な、何でっ!?」
「え?だってメチャクチャ分かりやすかったよね?華江、もしかして気づいてなかったの?」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……華江」
「何にも言わないでっ!!」
彼は雅則の気持ちを知っていた。
それを思うと、なんだが胸の辺りがもやもやしてきた。
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