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それから三ヶ月ほどたった頃、二人から付き合うことになったとの報告を受けた。二人で何度もあっているのは知っていたし、別々に入ってくる情報からも良い感じなのはわかっていた。
流石にどういう風にして付き合うことになったのかは聞いていないけれど、できることなら知らないままでいたい。
ただ、良かったねと言った時、自分ははたしてちゃんと笑えていたのかが心配だった。
長い付き合いだというのに不思議と今まで一度も彼と恋愛に関する話をした事がなかった。だから、付き合った女性がいるのか、どんな人がタイプなのか全く知らない。
彼の好みを知っていれば彼女を紹介していなかった。なんて言えるわけではない。ほとんど不可抗力のその場の流れだったのだから。
彼の事だから恋人ができたからといって友人関係をないがしろにする人ではないと信じていた。実際にその通りだったのだが、思っていたのと何かが違う。
違うと言うか……ちょっとおかしい。
彼と自分は親友で、彼女と自分も友人関係で、それでいて彼と彼女はつきあっている。確かに三人とも親しい間柄で、だからこのメンバーで会ったりなんだりするのはわかる。わかるけど三人で過ごす時間が圧倒的に多い。二人にあまり親しくなってほしくない自分でさえ、デートとかしてるのかと疑問に思うほどに。
あまりにも不安になったのでたまには二人で出掛けたらと聞いてみたら一緒が良いと騒ぎ出した。それも二人揃って。
わけがわからない。
「……あのさ、二人は付き合ってるんだよね?」
こんなこと本当は聞きたくなんてないけど、もしかして幻聴でも聞こえてたのではと思えてきた。
「うん。そうだよ」
自分で聞いておいてその答えに傷つくなんて勝手だってわかっているけどどうしようもない。
「なら、どうして誘うのさ」
二人が共にいる空間にいたくはない。いくら二人が付き合っている素振りを見せないとはいえ、事実は変わらない。対等に接していても自分が邪魔者に感じられてなないのだ。
「んなの、好きだからに決まってんだろ」
「…………」
屈託のない彼の言葉に絶句する。
「華江と二人きりより恵と一緒のが楽しい」
「ちょっとーそれはこっちのセリフー」
きっぱり断言する彼に彼女が反論する。
理解できない。
彼女の言葉を無視して彼はさらに言葉を重ねる。
「それとも何か?恵はオレの事愛してないとでも言うのかー?」
「……いや、愛してはないし」
何とかそれだけを言うも、頭はまだ麻痺している。
「ほら、雅則。みっともないよ。恵は私の親友だもんねー。さっさと身を引きなさいよ」
「ちょっと待て。何でそうなる。恵はオレの親友だぞ。お前こそ身を引け」
「アレだけ邪険に扱われといて親友?頭打った?」
「愛があるからこそ邪険にもできるんだよ。悔しかったら喧嘩の一つでもしてみろ。喧嘩するほど仲が良いって言うんだ」
「ちょっと聞いた、恵?今のセリフ。どう聞いても負け犬の遠吠えよね」
「いや……てか、言うほど喧嘩してないし」
「あっ、ばらすなよなー」
「えー何それー」
二人が言い合いを始める。仲良くじゃれあっているといっても良い。
そうかと、唐突に理解した。自分がいようがいまいが関係ないほどに二人の間には既にしっかりとした絆が結ばれているのだと。
「恵?どうした?」
「え?何が?」
「……いや、何か……んー?」
しきりに首をかしげる彼に笑いかける。
「何だかんだいってやっぱ二人仲良いよね」
「ばっ…いきなり何言い出すんだよっ」
「そうよ!何でこいつと…!」
「いや……そこは否定するところじゃ……」
二人はお似合い。
安心すると同時に胸が痛くなった。
結局、三人での付き合いはそれからも続いた。三人で遊ぶこともあれば、その中の二人だけで会うことも度々あった。気にするのは止めた。傍にいられるだけで良いと選んだのは自分なのだし、胸の痛みさえ無視すれば確かに楽しい時間を過ごせるのだから。
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