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まさに死の直前、とでも言おうか。
足の力が抜けて膝をつく。そこでとどめてまた立ち上がらなければならないとわかってはいても、もう体に力が入らない。
そのままバタ、という音をたててその体は地面へ吸い込まれるように倒れていった。
ただでさえまともとは言えなかった服はほぼ裂け、ほとんどなんの役にも立たない布きれへとなり下がっている。それに滲む血はその汚らしさを倍増させていた。
「っぅ・・・」
喉が痛い。まともに声も出ない。だらしなく開いている口はだいぶ前から浅い呼吸を繰り返していた。それは自分の命がもうすぐに尽きることを自分に知らせていた。
(死ぬのか、ここで)
死ぬのだったらここで力尽きるのも悪くはない。月や星が木々に覆い隠されていて光のささないここは自分にとって最高の死に場所だ。誰にも見られない。お前は猫みたいだな、なんて冗談めかして言っていた仲間の言葉も今は納得できる気がする。
こんな状況でなければ全力でここから逃げようとしただろうが、やはり死ぬ前だからだろうか、怖くないばかりか、少しの安らぎさえ感じていた。
悪くはない人生だったとは思う。
それこそ生まれた時には家族なんてものはいなかったが、信頼できる仲間はいたし、結局恋人にはなれなかったが、好きな人だっていた。
皆生きているだろうか、少なくとも幸せとはいえないことは確実だろう。
自分のせいだと自覚してはいても、償いなどできない。
(ごめん、な)
傷だらけの体を覆う闇は果てしなく深い。
それこそ自分さえも見失ってしまいそうなほどに。
(あ・・・)
わずかに光がさしたのを視界の端にとらえて、ふっと笑う。
自分にしてはできすぎた終わり方だ、と薄く笑いながら、彼の視界はさらに暗くなった。
[to the future]
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