神様の憂鬱
午後の予定
ジュウゥ、とキッチンに料理の音が響く。調味料が焼ける香ばしい匂いに、腹の虫が小さく鳴いた。
「って言ってもただの炒飯」
腹空いてるからどうでもいいけど、と自分の漏らした呟きに自分で答える。家事を余り手伝わなかった俺が作れる料理なんて高が知れていて、炒飯の他にはレトルトのカレーだとかインスタントラーメンだとかそういった物ばかりだ(そんなもの料理とは言わない、という反論は却下させてもらう)。
まあ、これから暫く、飽きるまではそれで食い繋げるだろうけど、流石に一年は無理だ。なので昼飯(炒飯)を食べたらこの周囲の散策がてら本屋を探して料理の本を買ってこよう。
「よし、完成」
今までで一番の最高傑作(あくまで自分が作った物の中でだ)であろう出来に口角を上げながら、皿に盛り付けテーブルへと移動する。さっき見つけたリモコンでテレビの電源を入れたら、丁度テニスの試合中継をやっていた。
「………人外が居るー」
うん、マジで。
画面の中の緑色のコートでは、両端に別れた2人の人間が跳ね回ったり吹き飛ばされたりしている。音も、普段よく聞くパコンッ、て音じゃなくてバコォッ!だとかギュアアア!だとか当たったら絶対無事では済まなさそうな物ばかり。テニスボール一つで人一人殺せそうだ。
2・3分その信じられない光景を眺めて、俺は静かにテレビを消す。胸には“テニス部には絶対関わらない”という固い決意が生まれていた。
「けど問題は、この学校にテニス部があるかどうかだよなぁ…」
行儀悪くスプーンを口にくわえて、放置されていた学校のパンフレットを手に取った。表紙には大きく
【立海大附属中学校】
と印刷されている。
「立海ねぇ、」
漫画に出て来た気がするようなしないような…。
パンフレットを読む限りでは文武両道のエスカレータ式進学校らしい。昨年度運動部の幾つかが大会で優勝したとも書いてある(けれど何の部活かは書いてない)。
「今日、本買いに行くついでに見学行くかな」
そしてテニス部の有無を確認しよう。うん、そうだ、そうしよう。
午後の予定を済ますため、俺は残りの炒飯を掻き込んだ。
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