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神様の憂鬱
世界反転の裏側



俺様何様神様様(自称)の話をまとめるとこうだ。


まず、俺が居た前の世界(神様が言うには“箱庭”と呼ぶらしい)があり、それと平行して沢山の箱庭(所謂、平行世界)がある。
神様はその様々な箱庭に生きる命を移動させたり増やしたりして、世界のバランスを取ることが主な仕事らしい。
しかし、今日。神様の手違い(詳しく言うならば手を滑らせて落とした)によって俺の居た箱庭が一時崩壊し、中の命が他の箱庭に散らばってしまった。一応、直ぐに修復をしたことでバランスは保たれたが、運悪く俺だけが別の箱庭(この世界)に取り残されたということだ。

《…ま、そういう事だ。当面の必要な物は全てその鍵の部屋にあるからな。好きに使え》
「はい分かりました…って納得する訳ないですよ!!俺戻れるんですよね!?大丈夫なんですよね!?」
《煩い。心配せずとも戻してやる》
「良かった……。で、どの位こっちに居れば良いんですか?」
《そうだな…、



 一年位か?》



「……はい?」
《だから、一年》
「えっ、ちょ、一年!?24時間が365回あるあの一年!?」
《それ以外の一年なんぞ儂は知らん》
「俺だって知りませんけど、ってか長過ぎですよ!!」

一年なんて、戻ったら卒業式が終わってるじゃないか!

《…仕方ないだろう。こちらとしても予想外なんだ》

電話の向こうから聞こえた、疲れの滲んだ声に、続けようとした文句を飲み込む。

「どういうこと、ですか」
《…お前の存在が、この箱庭に馴染みすぎたんだよ。まさか、と思う位の速さでな。一旦馴染んでしまった存在は、無理に移動させると他の存在に支障をきたす。だからそれを避けるために必要な準備に、どれだけ急いだとしてもお前達の時間で約一年程かかるんだ》

最後に大きく吐かれた溜息が、神様の疲労を如実に表していて、俺は何も言えなくなった。

《……だが、》
「?」
《準備が整い次第、必ず戻す。だからそれまで待っていてくれ》
「………神、様」
《頼む》

さっきとは打って変わった真剣な声音で頼まれて、断れる訳が無い。

「……分かりました」
《ああ。ありがたい》

どうせ戻れないのなら、一年間留学するようなものだとでも考えよう。
そう考えて、俺は小さく笑みを零した。










オマケ

「…あ、そういえば。この世界ってどんな感じの世界なんですか?」
《ああ?…そうだな、テニスをやっている人間が多い上に、やたらと美形も多いな》
「……へぇ(まさかねぇ…)」
《確かお前の箱庭で……えーと、何だったかな……確か……【テニスの王子様】って漫画になってたぞ》
「……………ソウデスカ(まさかかよぉおおおお!!)」




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