神様の憂鬱
未知との接触
さらさらとした黒髪を短めに揃え、日本的に整った顔立ちをしたその彼は、当たり前だが見たことも無い制服に身を包んで俺の事を見つめている。
制服着てるし、顔立ちも大人っぽいから多分高校生だと思う。
身長は俺より少し低い位だから、大体…180センチ前後?
体つきは細身だけどしっかりしていて、きっと脱いだら筋肉とか凄いんだろう。手に、テーピング等が入った袋を提げてる辺り、運動部かな。
とか目の前の彼を観察してみるけれど、まあとにかく俺の言いたい事は、
「……何か」
の一言です。
…うん、本当に何の用かな。自分達初対面だし、俺の顔はガン見される程整ってる訳でも無いし(目の前の彼は別だが)、何か怪しい事でもしてた訳でも無いし(断じて万引きとかしてないからな!)。彼が俺を見つめてくる理由がこれっぽっちも見当たりません。
しかもこんだけ脳内で喋る時間がある程彼は俺の問い掛けに対して無反応だし!
「…誰?」
沈黙が居たたまれなくて今度は別の質問をしてみる。これで回答が貰えなかったら俺何か意味も無くヘコみそう…ってかヘコむ。人間って無視が一番精神的にクルんだからね!?
そんな風に軽く脳内でパニック起こしてる俺に対して、彼は何気なく口を開いて、
「柳蓮二だ」
と自己紹介をして下さいました。いやいやご丁寧にどうも。俺の名前は高科新です……って。
だ か ら 何 だ。
彼が俺を見つめている事と彼の名前には一切の関連性は無いだろ!?質問失敗しちゃったよ俺!どうしよう!てか貴方も喋れるなら初めの質問に答えてくれても良くなかったですか!?一瞬障害を持ってらっしゃる方かもって心配したじゃないですか!!
「…貴方の名前は教えて貰えないのか?」
「へっ?」
え、何?自分は名乗ったから今度はお前の番だって?いや、うん、確かにそうだけどさ、俺の名前なんか聞いて何になるのってよりも何に利用する気なの!?自分で言うのも何だけど利用価値なんてこれっぽっちも無いよ!せいぜい懸賞送るときに水増し用に書ける位だよ!!
「貴方の名前は?」
そして貴方も何でそんなに俺の名前を知りたいんだ!!使う気満々!?もしかして悪用なんかしちゃったりなんだりするの!?そのつもりなら絶対教えない!、とか言える訳も無くて。
「……高科だ」
ええはい、教えましたよ。フルネームじゃないのは最後の抵抗です。このまま突っ立ってたら彼に下の名前について突っ込まれそうなので(だって明らかに満足してないオーラが出てる)、俺は此処で戦略的撤退を開始します。
じゃ!
踵を返そうとした時彼が何か言おうとしてたけど、そこは見ない振りで全力スルー。
本屋の入口まで脇目も振らず歩いて行きましたとさ。
いやもう何あの人、恐い(泣)
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