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神様の憂鬱
未知との遭遇


「料理…料理、っと」

昼飯を食べ終えた後、部屋に真新しい財布とともに置いてあった生活費(数えてはいないが50万程はあっただろう)から5万程抜き取って買い物にやって来た。家が高級マンションとだけあって、都心までそう時間はかからなかった。今はデパートの本屋で素人にも出来そうなレシピ本を探している。
…が、しかし。

「何処にあるんだよ…」

さっきから探せども探せども料理コーナーが見当たらない。既に店の中は2周目だ。もしかしてこの店置いて無いのか?え、もしそうなら俺探し損じゃん…。
そう考えると何か疲れが押し寄せて来て、邪魔にならなさそうな隅っこでしゃがみ込んだ。ここで少し休憩してから次の本屋に行こう。

「はぁ、時間勿体な。……ん?」

しゃがみ込んだまま、背後の本棚に平積みされていた本を適当に手に取った。さっき家で見た緑の長方形と黄色の球体で構成された表紙のその本の題名は、


【テニス講座 上級編】。


無意識で取ったのにまたテニスかよ、と思ってしまったのは仕方ない。
でも、中学生があれだけ人外の動きをするスポーツの指南書がどんな風なのかちょっと気になるのも事実。もしかしてもしかしなくてもこの本の中に人体改造の極意とかが書かれたり何だりしちゃっているんだろうか。
何たって上級編だし。
ま、身長と平均より幾らか上な運動神経以外取り柄の無い俺には大して効果も無いだろうから

「読む意味も無いだろうけどな」

見るのはタダだ。

ぱらりと表紙を開いて中身を流し読みする。
内容は至ってシンプルで、恐らく初級編中級編のおさらいであろうものが始めの数頁に渡って(ここには特に目を引くものは無かった)書かれ、後は上級編として難易度の高そうな球の打ち方やステップ、知っておくと得をしそうなマル秘ルール(マイナー)の説明がされていた。
人体改造の秘術の様なものは、無い。

……つまりあれか、漫画の中やさっきテレビで見てきた人外の動きをするためには技術云々テクニック云々(同じ意味か)の前に選ばれた人間でないといけないのか。

どこのスーパー戦士だよ。


「(平凡な)俺には読む価値も無かったな」

本を閉じて元の場所へ戻す。
ここに料理本が無いことは確認したから別の本屋に向かおう。
そうして立ち上がって体の向きを変えた時だ。

「……ん?」

振り向いた先、開いてるか開いていないか分からない眼をした男子生徒が、俺の事をガン見していた。


…………誰!?





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あきゅろす。
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