Confusion!!(修正前) 6. 「さあて」 静雄さんが言う。 ジリジリと間を詰めてくる『罪歌』達を前に、彼は自然と笑みを浮かべていた。 ♂♀ それから暫くして、静雄さんに向かってきた斬り裂き魔の一人から、突然敵意が消えた。 そして、勢いのまま戦意を失った斬り裂き魔ーつまりは、ただの一般人の顔面を砕こうとしていた静雄さんの拳はー 鼻先に到達する寸前で、その動きを完全に停止させた。 「……ハハ」 寸止めになった拳を見つめー静雄さんは笑っていた。 「ハハハハハハハハ……ハハハハハハハハハ……」 その笑いは、純粋な子供のようでもあり、狂気に満ちた殺人鬼のようでもあり。 それは、平和島静雄という人間の中でー『暴力』が『力』になった瞬間だった。 ♂♀ 「静雄さん」 私は全てが終わった公園で、彼に話しかける。 「珠音!? お前……見てた…のか?」 静雄さんが驚いたようにーそして、少しだけ怯えたように言う。 私はそんな静雄さんにデコピンをした。 ……身長差がありすぎて大変だったけど。 「うおっ!?」 痛そうにはしてないけど、静雄さんは突然の出来事に驚いている。 「静雄さんは怖くないですって。 何回も言ってるじゃないですか。 寧ろ格好良いですよ、今の静雄さんは」 私がそう言うとー彼は私を抱き寄せた。 「!?」 今度は私が驚く番だった。 「なあ珠音……。 俺は、今まで怖かったんだ……。 一番信頼しなきゃいけねえ手前自身が怖かった」 彼が唐突に話し出す。 私は静雄さんに抱きしめられたまま、それを黙って聞いている。 「でもよ……俺は今日、生まれて初めて自分の意思で全力を出せたんだ…… だから、もう、いいんだよな? 俺はー自分の存在を認めてもいいんだよな? 俺はー自分を好きになってもいいんだよな? 俺はー他人を愛しても、いいんだよな?」 私が静雄さんの腕の中で頷くと、彼は私を一層強く抱きしめた。 私は、何と無く静雄さんが泣いているような気がして……優しく彼の背中に手を回した。 ーでも、ごめんなさい、静雄さん。 ー私はね、まだ貴方を愛することは出来ないんだ。 ー人の愛し方を知らないから。 ーそれに私は……誰かを愛する以前に、自分の過去と向き合わないといけないから。 だから私はーあの人の元へと帰るんだ。 私とあの人はー見えない鎖で繋がれているのだから。 [*前へ][次へ#] [戻る] |