Confusion!!(修正前)
2.
「でも、折原さん。
セルティさんの首を持ってるのは、矢霧製薬だったんですよね?」
「まあ、そう言う事になるかな。
どうして?」
「……岸谷さんは、セルティさんの首が矢霧製薬にある事を、知ってたんですか?」
私は、すっかり冷めてしまったコーヒーを啜りながら彼に尋ねる。
「さあ、どうだろう?でも俺は知ってたんじゃないかと思うけどね」
「……知っていたなら、どうしてセルティさんに何も言わなかったんでしょう」
「どうしてだと思う?」
折原さんは、身を乗り出して私に尋ね返した。
……これは、試されてるな、私。
溜息を1つ吐いて、今の段階のおいて少しずつ考えられる結論を導き出していく。
「……あの首に、岸谷さんがセルティさんに知られたくない事が隠されているから、ですか?」
「……まあ、当たらずとも遠からずってとこかな」
折原さんは立ち上がると、大きな窓から新宿の夜景を見下ろす。
俗にゴールデンタイムと言われる時間帯程ではないが、真夜中にも関わらず街は未だに煌々と明かりが灯り、疎(まば)らに車が行き交っていた。
「珠音はさ、恋人とか好きな人とかって、出来た事ってある?」
「へ?」
あの折原さんが、唐突にそんな事を聞く物だから、私は思わずそう聞き返してしまった。
かと言って折原さんの表情は冗談を言っているようには見えないし、コレは真面目に答えるべき……なのだろうか。
「……いえ。ありません、けど」
「ふぅん、そう。
で、本題なんだけど。
新羅が運び屋に首の在り処を教えなかったのはー新羅が運び屋を愛していたからさ」
「……?」
愛しているのなら、普通は首の在り処をセルティさんに教えてあげるべきだったんじゃないだろうか?
そう考える私の心を読んだかのように、折原さんは私の疑問に答えてくれた。
「新羅は恐らく、あの首に運び屋が無くした記憶が隠されていると思ったんだろうね。だから、あの首を運び屋が再び手に入れた時、彼は運び屋がアイルランドに帰ってしまうと考えたんだろう。アイツはそれを恐れたのさ。
新羅の運び屋に対する恋慕はもう随分と長いみたいだし、他の女の子に告白されても微塵も興味を示さなかったらしいからね」
……なるほど。
恋を経験した事がない私にはまだ解らないけれど、好きな人が出来ると、その人に一途になっちゃうものなのかな。
岸谷さんはセルティさんを騙すような事をしてまでして、自分の愛を貫いた。
普通だったら。
普通だったら、愛する人の為に首の在り処を教えてあげるのだろう。
でも、岸谷さんはそうはしなかった。
それが良い事なのか悪い事なのかは、私には解らない。
でも、歪んでいるのにとても美しい愛情を抱いている岸谷さんに愛されているセルティさんを、私はとても羨ましく思った。
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