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永久の忠誠を

新ボスからの命で、私達は敵対マフィアの動向調査に赴いていた。
街並みが私の知るものと遠くかけ離れている事に驚いていたのも、もう随分と前の事のように思う。

この任務用に借りた部屋も無機質な物で、あたりまえだが…大した物はおいていない。
私は霧の様に姿を変えてみせるなんて芸当、持ち合わせていない為、買い出しはもっぱら変装した霧に任せっきりだった。

その間、この何もない部屋に1人になる訳だが……なんともつまらない。
ジョット様は面白い事がお好きな方で、御側に居るだけで何やら波瀾だらけの毎日だった。

今でもこんなにもはっきりと思い出せるし、ついこの間の事の様に思える。
けれども、何故だか、思い出せない事がある。
氷付けになった直前の記憶だ。
何故、ああなったのだろうか……

「何を考えているのですか」

「ああ、帰ったか。霧」

後ろ手にドアを閉めながら部屋へと入ってきた人物をチラと眺め、今までの思考を振り払って窓の外へと視線を戻した。
もっと早くに動きがあるとの事だったが、中々それらしい動きが見れない。
ここに入り浸って、かれこれ半月になる。
少々、綱吉様の御尊顔が懐かしい気になってきた。

少し離れた所に腰を下ろした霧は、買ってきた物を徐に並べ始める。
簡単に食べられそうな物ばかりなのにも慣れて、それを受け取って早速口にした。

「どうですか?」

「未だに動かないようだ」

すっと立ち上がれば、霧が変わりに今まで私が居た所に座り、外の様子を窺う。
まったく、あのファミリーも平和なものだ。
いっそのこと、さっさと我々が乗り込んでしまった方が早いのではないか、なんて事まで浮かんでしまう。

ふと、霧の長く美しい髪が揺れるのが見えた。
何の気なしに手を伸ばし触れると、それはさらりと手のひらで揺れる。

なんですか、と問うてくるような霧の視線など無視して、さらさらとそれを手のひらで弄ぶ。
あの頃も長い髪をひとつに縛り、風邪に靡かせながらジョット様と並んでいた。
あれ以来、髪を肩より伸ばした事は無かっただろうに……それ程、あの綱吉様の影響は凄まじいものと言った所か。

「……なんですか、さっきから」

「霧の髪は美しいな」

言えば、霧は何故かため息をひとつ。
嫌だったのだろうかと髪を手放して手を引けば、それを追う様にして霧に手を掴まれてしまった。

なんだろうかと見上げれば、霧は呆れた様にまた小さくため息を漏らす。
人の顔を見て溜息とは、失礼ではないだろうか。

「あなたは相も変わらず・・・」

「なんだ」

「誰彼構わず、無意識に口説いてますね」

「……なんの話しだ」

こいつだって、相も変わらず真意の読めぬ顔で、真意を隠して話すではないか。
私に文句を言える立場ではないだろう。

そして何故か掴んでいた私の手を引き、口元に寄せて軽く口付けている自分は何だって言うんだ。
これだって、私が別の者ならば、それだって口説かれていると思うのではないだろうか?
霧の指が私の手に絡むのに背筋に何かが走るのを感じ、手を振り払って引っ込めた。

「何なんだ、何をする」

「ええ、折角口説かれたので。僕も便乗しようかと」

こいつの考えている事は、一生私にはわかり得ないだろう。

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