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永久の忠誠を

あれからどれほどの時が経ったのだろう?
この中に居ると、何も解らない。感じない。

瞼を開けることすらままならず、ましてや、体なんて動かせたもんじゃない。
息だってしてないだろうに、それでも私はここに存在きている。
霧が最後に訪れたのはいつだったか…

あいつが自由に外を歩けるのが羨ましいと思う反面、何十、何百という月年をひとり生きるのは止めたい気もする。
次の時代で大切な人に会ったとしても、その人は霧を知らないのだから。
もう、巡るのをやめたからここにも来れなくなったのなら……それでいい。

世界から隔離されたこの場所は、ジョット様に頼み込んで手に入れた私の世界だ。
満足しているし、ジョット様には感謝している。
しかしながら、少しばかり不平を言わせてもらえば、私の意識までも眠らせて欲しかったといったところだろうか。

なんてぐだぐだと考えていれば、いい具合に眠気が脳内を支配する。
睡魔に抗う必要などなく、それに誘われるように眠りへと堕ちた。
こんな毎日を過ごしているのは何故だっただろうか?記憶が遠すぎて思い出せない。





私は何かが砕け散る音で目を覚ました。
辺りを見回すと、記憶の中の最後の部屋と、見知らぬ男女……って、あれ?

何故、私は目を開いているのだろうか?
何故、ここにジョット様によく似た方と、霧によく似たものが…というよりも、よく見ればそれ以外も守護者達にそっくりではないだろうか……子供か?
ああ、それよりも。

「寒いのだが…だれか衣服を貸してくれないだろうか」

氷の中では何も感じなかったと言うのに、外に出てみれば寒いなんておかしなものだ。
しかしながら一糸纏わぬままではあまりに寒く、自らの体を抱くかのように縮こまる。

すれば苦笑混じりに霧によく似た男が歩み寄ってきて、羽織っていたコートを被せてくれた。
その仕草が、ジョット様と居た霧によく似ている……

「霧、か?」

もしかしたら、と思ってしまったら、それは直ぐに口からこぼれでてしまう。
ずり落ちそうになったコートを整えながら、無駄に背の高いそいつを見やった。

しかしそいつはクスリと笑いながら立ち上がり、踵を返し歩き出す。
そいつが何者かの名を呼べば、紅一点はジョット様似の者に一礼して、後を追って出て行った。

やはり、霧に見える。
だが、ジョット様と別れてからいくらか経った霧は、別人のように荒んで感じた。
理由こそ言わなかったが、マフィアを心底憎むほどに……しかしさっきの者を見た限り、少なくともこの場にいる者達には気を許しているように思える。

「聞いてんのか!?」

耳をつんざくような怒声が響き、思い出したように辺りを確認した。
2人が消えてしまった先をいつまでも見つめていても意味ないし、と自分を封じていた氷を溶かしたであろう人物達へと思考を戻したのだ。

先ほど叫んだのは銀灰色の髪の者だろう。
どこか不機嫌そうに、というよりも警戒しているのだろうか?
眉間に皺を寄せてこっちを見ている。

「すまない。聞いていなかった……それよりも、今は何年だ?」

聞いていなかった発言が気に食わなかったらしい銀灰男は怒りに飛びかかってこようとするが、それに至るまでジャッポネーゼの刀男が制止する。
そしてそれを見届けたジョット様似はにこりと微笑みながらこちらへと歩み寄って、私の目前にしゃがみこんだ。

「今年は20хх年だよ」

20хх!?
もうそんなになっていたのか……

驚愕に一瞬目を見開くが、すぐにまたジョット様似の者を眺める。
そんなに経っているのならば、親子や祖父と孫なんて近しい関係ではないだろう。

ならばこの外見は他人のそら似か、まさかの先祖帰りとなる。
先祖帰りだった場合は、この者はボンゴレの後継者とかなのだろうか?
まあ、他人のそら似だった場合、万に一つの可能性でも、氷を溶くことは出来なかっただろうが。

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あきゅろす。
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