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Long 『HUNTER×HUNTER』
14
俺の住んでいた町の病院ではなくて、隣町のここらでは一番デカイ病院に搬送されたらしく、あの場所へは結構遠い。

この街とは正反対の方角にあるんだ。
しかも、町外れ。

病み上がり(一応体はそうなのだろう)とはいえ、あちらの世界でも断然やってこれた俺の足だ。
しばらく走っていたらついた。

「ここら辺だと思うんだけど…」

キョロキョロと当たりを見渡しながら、その当たりを行ったり来たりする。
辺りに人が居ないのを確認して、小声で呼びかけてみたり。

しばらくそうしていたにも関わらず、一向に見当たらない。
あの、不愉快なぶよぶよ。

「どうしたもんかなぁ…」

ぽりぽりと頭を掻きながら考えてみる。

炎狼を呼べたらどんなに心強いか!
でもここは平和惚けの日本!
そんな事したら動物園から逃げただとか、保護団体だとか、面倒な事にしかならない事が目に見えている。

「はぁー…ぁ?」

額に手を当てて、盛大にため息を吐きながら、塀に背を預けようとしたその時。

懐かしきかな、背中にあのぶよぶよ。
そして、勢いを殺しきれなかった俺は、そのままあの花畑へと倒れ込んだ。

「ぶっ…って、落ち葉かよ!?」

一面に溢れんばかりの落ち葉が敷き詰められていて、俺は口に入りかけた一枚を地面に叩きつけた。

「おう。また来たのか」

前回よりもどこか態度がでかい声だな…なんて思いながらも声の方を向いたら、声だけじゃなかったみたいだ。
殿様とかが使ってそうな肘当てに体重を掛けて、なぜか女物(ここ重要)の着物を着崩して男物みたいにして身に纏っているあいつが居た。

「うわー…近寄りたくねぇ」

「なら帰れ」

「ごめんなさい」

俺は心の中で大きくため息を吐いて、そいつに近寄った。
色素が薄すぎる程の白に近い長髪が、深い赤の着物に似合っている…なんて思ったのは気付かなかった事にしておこう。

踝よりは高い位置まで積もった落ち葉をかき分けながら、そいつの前まで行って座る。
意外と、座り心地はいい。

「で、何の用だ」

「何故、俺を元の世界に戻した」

「さあ?俺がした事ではないな」

訳が分からないと言わんばかりに、肩を竦めて言うそいつ。
俺はイラッときて、そいつの胸倉を掴み上げる。

「なら、なぜ!俺はここに居る!?説明しろ!!」

「説明なら、してやろう」

はぁっとため息を吐いて、俺の手を軽く叩く。
俺はいらだちを無理矢理押さえ込んで、そいつの胸倉から手を離して元の場所に座り込む。

「お前が変わりたくないと、望んだからだ」

すっとどこから出したのか解らない扇子で俺を指す。
俺は言葉の意味が分からず、首を傾げる。
すると、そいつは扇子で頭を軽く掻きながら、ため息を吐いた。

「人は環境が変われば、少なからず何か変わるものだろう?俺だって、その為にお前をあの世界に送った。しかし、お前は変化を望まなかった。だから、あの世界はお前を異物と判断し、排出した」

俺は記憶をたぐり寄せながら、そいつの言葉を検証してみる。

『お前をほっといたら、あのそれなりに平和な世界で暴れ回るだろ?…だから、お前に合う世界に移そうと思ったんだ』

つまり?
あっちの世界なら暴れても平気って意味じゃなく、別の環境で違う俺になれって意味だったのか?
俺に合っていて、俺が適合出来る場所…

『じゃあ、僕と居たら君はまた変わるのかな』
『恐いんだ。変わるのが。』

ゴン達と居て変わるのが恐いと思った。
ヒソカにまた、もっと違う俺にされるのが恐いと思った。

嫌だと、思った。

「ほらな。その結果、こうなっただけの事」

「けど…だって、なんで?」

俺には意味が分かっていなかった。
だって、そんなの俺が望んだ位でなんでも変わるなんておかしいじゃないか。

俺は神でもなんでもないんだから。

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