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花びらヒラリ(013 210)
 ふわふわと、風に揺れる銀色の尻尾。
 それに反応した子犬…ことティーダは目の前で揺れていた尻尾にバックアタックをかました。

「フリオ―!!」
「どわっ!? っつ!ティーダ!! 危ないだろう! 飛びつく時はせめて一言かけろ!!」

 どうやら武器の手入れ中だったらしいフリオニールはいきなり飛びついたティーダを嗜める。だが、止めろと言わないあたりはフリオニールも、ティーダが飛びついてくる事を甘受している証拠でティーダは「はいはい」と生返事を返す。おそらく、ティーダも直す気はないだろう。

 まったく…と言葉に出さないがため息を吐いた事でそれを表すとフリオニールは武器の手入れを再開する。
 フリオニールの肩に顎を預けていたティーダはそこから降りて、フリオニールの手元がよく見える位置に頭を持っていく。

 フリオニールの武器は多種多様。手入れの方法もそれぞれで異なってくる。だが、どの武器を手入れする時もフリオニールの手は優しい。
 それは自分がブリッツボールを手入れするときと同じだなと思ったティーダは思わず笑う。その笑いはとても静かなものであったため、フリオニールには気付かれずに済んだ。

 しばらくフリオニールの手入れを見学していたティーダであったが、ふわりと鼻をくすぐる匂いに気づいた。

「(あれ…? フリオニールから香ってくる…)」

 ティーダは手入れをしている手からゆっくりとフリオニールの方に目線を向ける。フリオニールは未だ武器に集中したままだ。
 ティーダは空気中の匂いを嗅ぎ、やはりフリオニールから香ってくるものだと認識し、その匂いの許を目で辿る。

 フリオニールの頭に目がいった時、襟足に薄桃色の何かがついているのが見えた。ティーダはそれが何なのかを確かめるためにフリオニールのうなじに手を伸ばす。
 薄桃色のものにティーダの手が触れた時、フリオニールは「ひいっ!?」と情けない声を出して武器を取り落とす。どうやらそこを不意に触れられたのが、よほどくすぐったかったようだ。

「なんなんだ、一体!? 邪魔をするならあっちに行ってくれないか?!」
「あ、ごめん。フリオニール。実はさ、これがくっついていて」

 顔を真っ赤にして怒鳴るフリオニールにティーダはどこ吹く風と言うように手に取ったそれをフリオニールに見せる。
 その態度にまた怒りそうになったがそれを飲み込んでティーダの差し出したものに目を向ける。

「これ、花びら?」
「花びら?…あ、そういえば」
「そういえば?」
「ここに来る前に、花畑があってな…。そこでついたのかな」

 フリオニールは「まだ付いていないか?」とティーダに尋ねながら、身体や髪をはたいている。
 ティーダはフリオニールの背中をはたきつつ、他に花びらは付いていないことを確認する。
 それを確認できた後、フリオニールはティーダの方に向き直ると、少々照れたように頬を掻いて何かを取り出した。

「これ…何ッスか?」
「ああ、花畑で作ってみたんだ。…付けてみてくれないか?」

 フリオニールが取り出したのは、小さな花で作られた腕輪。なるほど、これを作っていたからフリオニールの身体には花びらが付いていたのだ。
 ガタイはでかいのに意外と器用なフリオニールは花や小さな宝石でアクセサリーを作るのが得意だ。意外な趣味に最初は驚いたが、今となっては厚意がとても嬉しくてくすぐったい。

「ありがとう、フリオニール。大切にするッス!」

 ティーダは右腕にフリオニールから貰った腕輪をつける。ティーダの嬉しそうな笑顔にフリオニールも笑顔で返す。

 ティーダが手を振った時、腕輪の花びらがヒラリと舞った。

花びらヒラリ お題配布元:猫屋敷

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