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夏空の下の君(013 24710)
 燦々と照りつける太陽。目の前には空の青色を湛えた湖。
 そんな状況をはしゃがずにはいられない弟が一人、三番目の兄の制止も聞かずに飛び込んだ。

 ティーダは元の世界で水に関連するスポーツ選手であった。
 それ故か湖や海を見つけた時のティーダのテンションの上がり方はコスモス軍の中でも群を抜いている。

 そして、水辺を見つけた彼は後先考えずに飛び込んで、まるで水を得た魚のように嬉しそうに笑うものだから、制止しようとしたフリオニールも苦笑いを浮かべるしかなくなる。
 もちろん、セシルは微笑ましそうに笑い、クラウドは静観を決め込んでいる。

「フリオニール! セシル! クラウド! 皆で泳ごうッス!!」

 しばらくは飛び込んだ水の感触を楽しんでいたティーダが、岸辺で休憩している保護者三人組…フリオニール、セシル、クラウドに誘いの声をかける。

「いや、俺は気にしなくていいから…。好きなだけ泳いでいるといい」
「僕も此処で見ているよ。でも、あまり遠くへは行かないでね」
「…待っている」

 三者三様の言葉は、どれもティーダの誘いを断る言葉。
 ティーダはつまらなそうに頬を膨らませると黙って湖の中央にむかって泳いでいく。
 水に入っている時のティーダはとても生き生きとしていて、時々、彼は人魚なのではないかと錯覚させられる。

 そんなティーダが見たくて、セシルもフリオニールもクラウドも、水に飛び込む彼を止められないのである。

 しばらくすると泳ぐのに飽きたのか、ティーダが潜水を始める。水の中で三十分ほど息を止められるということにはかなり驚愕した。
 ティーダは「訓練次第だ」と言っていたが、このメンバーでは彼以外にそんな芸当のできる者はいない。たとえ訓練をしたとしても、彼のように自在に泳ぐことは誰もできないだろう。

 彼ほど、水に愛されている者はいないだろうから。

「ぷっはー!! みんなー! 湖の底に、アイテム見つけたッスー!」

 潜水していたティーダが輝くものを手にして上がってきた。どうやら水底に幾らかアイテムが沈んでいたようだ。
 水中に落ちたアイテムを拾えるのは彼だけなので、いつの間にか宝の回収係となりつつあるティーダ。
 ティーダが湖の底で見つけた戦利品は交換用の素材として使えるものばかりだった。

「よく見つけたね。えらいよ。ティーダ」
「えへへ…。俺、これくらいしか特技がないッスから、役に立てたら嬉しいッス」
「これくらいの特技、といってもすごい事だぞ」
「…ティーダは、それでいい」

 三人に褒められたティーダは嬉しそうに顔をほころばせる。湖でぬれたためにいつも跳ねているティーダの髪はぺしゃりと垂れている。

 洗いたての犬のようになったティーダが可愛いのか、三人は同時にティーダの頭を撫でていた。頭を撫でられたティーダは水に入っていた自分よりも体温の高い三人の手に目を細めて甘受していた。

夏空の下の君 End お題配布元:猫屋敷

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あきゅろす。
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