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キスは君から(∞ 3→→←10)
 初めて会った時は、微妙な関係。

 初対面のオーヴ…あの時はオニオンナイト、という称号名でしか知らなかったけど。
 オーヴは一人でいるか、ティナといるかで、他の皆といることは殆どなかった。たまに俺やバッツがくっついてきても冷たくあしらって、特に俺から離れたがった。そんな態度に微妙に傷ついた時もあった。
 
 十一回目の戦いの時、俺がクラウドとティナを庇って記憶を失ってカオス軍を経由して戻ってきた時、オーヴはとても動揺していた。
 それにはティナも俺と同じような状態だったということもあるだろうけど、あのときのオーヴの表情は不安と悲しさで押しつぶされそうな、年相応の子どもの表情をしていた。

 俺が記憶を取り戻してしばらくしたとき、オーヴはティナを守れなかったと落ち込んでいた。それを励ますとオーヴはこっそりと本当の名前を教えてくれた。
 ティナにも教えなかった本当の名前に俺はどこか嬉しくなった。

 それ以降は俺が抱きついてもオーヴは避けなくなった。弟分ができたみたいでとても嬉しかった。

 そして、皆が皆、クリスタルを手に入れて最終決戦が近くなったある日、皇帝が俺の真実を語り、オーヴだけが俺の隠していた“本当”を知った時。オーヴは今までに見た事がないほどに絶望の表情を浮かべていた。

 その時、俺はオーヴの気持ちを再確認し、俺もオーヴと同じ気持ちだと伝えた。これで俺に思い残すことはない。あとは戦いを終わらせて、俺が消えるだけだと、覚悟をする事が出来た。

 そして、俺は消えた…と思っていたんだけど、俺は大きな記憶の海の中で漂っていた。そして、皆が俺を呼ぶ声で俺は戻ってくることができた。

 真っ先に俺に抱きついたのはオーヴ。あの時のオーヴはもう離すものかと言わんばかりに俺に抱きついた。俺はこれだけ慕われているんだな、とじーんときた。

 でも、それが“親愛”や“兄弟愛”の以外のものだったという事にはちょっと予想外だった。

……………

 そして、現在。俺は晴れてオーヴの恋人になった。
 もちろん、こんないたいけな子どもを誘惑したのだから、それなりに負い目もあってみんなには内緒にしているけど。オーヴはそれが不満らしい。

 だから、オーヴは皆が集まってくるような場所でわざと俺にべったりとくっついたり、あからさまにアピールしたり、キスを迫ってくることだってある。その時に発せられる絶対零度の視線。

 俺に向けられているものではないと知っていても背筋がぞっとする。ある程度のスキンシップならごまかしが効くからいいけど、キスだけは適当な理由を言って避けていた。…でも、今日はもう逃げられそうにないです。

「ねぇ、ティーダ。いい加減に諦めちゃいなよ」

 今の俺の状況を説明すると、こうだ。親父との(本気の)練習で疲れた俺はソファで爆睡していた。
 しばらく寝ているとドスン、と腹に重みがかかって、何事かと眠い目を擦って薄目を開けた。
 すると、目の前にあったのは自然な山吹色の髪と悪戯に成功した子どものように細められた翡翠色の目。オーヴは寝ている俺の顔を覗き込んでいた。もちろん、俺の腹に馬乗りになって。

「確かにここでの僕の見た目は子どもだよ? でも、外の世界ではちゃんと大人になったんだ。
 だからもう、僕は子どもじゃない。性的欲求だっt「わーわーわー!きーこーえーなーいー!!」

 子どもの姿でとんでもない事を言いそうになったオーヴの言葉をさえぎるように俺は叫び、耳を塞ぐ。
 あーもう! 子どもがそんな破廉恥な事を言うな! 俺が知っている純真なオーヴを返せ!

 …と言いたいけど、子ども扱いしてブチ切れたオーヴが何をするか分からないから、言葉は腹の中に呑み込んでおく。

 オーヴの言った通り、今のオーヴにはあの時にはなかった大人の雰囲気?みたいなものを纏っている。
 形容するならば、ジタンとバッツを足して二で割ったような感じ? 紳士的で、計算高いタラシ。
 でも、子どもの姿をしている時はあの時のオーヴみたいに可愛く甘えてくるから無碍にできない俺の迂闊さ…。まぁ、俺がオーヴに惚れているという弱みもあるのだけど。

「はぁ〜…あのね、そういったことは子どもの身体だと抵抗があるものッスよ」
「ふ〜ん。だったら、アルティミシアに頼んで成長魔法でもかけて貰おうかな」
「ヤダ! それだけは絶対にダメ!!」

 もし、大人の体になられたら、俺の体が持たないような感じがする!!
 え、なんでそう思うかって? 本能的にそう思ったんだっての!!
 きっと、アルティミシアだって面白がってオーヴに加担するに違いない。

 不満そうにしているオーヴに俺は腹筋だけで起き上がると、オーヴの頬に軽くキスを落とす。唇じゃなかったのは位置的に悪かったから。
 オーヴは俺のキスに一度だけ驚くと、とっても嬉しそうな笑顔を浮かべたんだ。

「なーんだ。ティーダからしてくれるなら、もう少し後でもいいかな?」

 俺からのキスで貞操が守られるなら、どれだけでもしてやる!…まぁ、いつまで持つか分からないけど。

 …でも、俺だってオーヴの事は好きだ。
 もちろん、恋人としての意識だってある。
 ただ、心の準備ができていない。

 でも、しょうがないかもしれない。
 オーヴが大人になっていく中、俺は時間の感覚もない、誰もいない海の中を漂っていたんだから。

 オーヴ。俺の心が大人へと近づくまで、もう少しだけ待ってくれよ。
 俺もすぐに追いつくから。ウン十年待ったのだから、もう少しだけ待ってくれよ。

 それを伝えるように、もう一度、俺から…今度はオーヴの唇に…キスを落とした。

キスは君から End お題配布元:猫屋敷

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あきゅろす。
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