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君の声(012 召→10)
 ずっとずっと、覚えているよ。(ストーリーネタばれあり)

 ふと気がつくと、私は辺りを見回していた。
 幻聴だって解っているのに見回すのは、君が夢幻だったから。

 でも、夢幻でも私は君と笑って、怒って、戦って、最後に別れを悲しんだ。

 理由も分からずこの世界に飛ばされて、訳のわからないまま私の使命を説明されて、仲間やジェクトさんともはぐれて、私は独りになってしまった。

 今は何処かのお城の中に居るけど、見た事もない紫の石でできていて、正直気持ち悪い。
 独りぼっちになって心細いとき、私はよくこの声を思い出していた。

『ほら、ユウナ!
 顔を俯かせないで!
 ばびゅーんといくッスよ!』

 目を閉じるとほら、君の声がこんなにもはっきりと聞こえてくる。
 私は君の声を聞いただけで、前に進んでいけそうな気がする。

 それに、この世界なら、君と会える気がする。
 根拠もない勘だけど、そんな感じがした。

 もしも、君に会えたなら、どんな話をしようか?
 君がいなくなってからの話? それとも、君との思い出の話?
 どんな話でも嬉しい。だって、私は君の傍にいるだけでこんなに心が温まるのだから。

 久しぶりに、指笛を吹いてみようかなと思う。
 だって君は言ったから。「指笛を聞いたら、駆け付ける」って。

 ピィー………。お城の中で私の指笛が木霊する。当然ながら、指笛に答える音はない。
 ちょっと残念だな。と思いつつ、私は皆と合流しないと、と思って立ち上がった。その時だった。

「あんた、なにしているんだ?」

 その声に私の動きが止まる。聞き覚えのある声にほんの少しの胸の痛みとそれを打ち消すくらいの高鳴り。まさか、まさかと思いながら私は後ろをゆっくりと振り向いた。

 私の目の前には、夢幻となって消えた、君がいた。

「あんた、ここにいたら危ないよ。さっさとどっかにいったほうがいい」

 私の名前を呼んでくれない君。コスモスから聞いていた通り、やはり記憶を失ったんだろう。
 分かっていても悲しくて、私はぽろりと涙を流していた。…私たちの“敵”を前にしているのに。

「ふぇ?! ちょ、どうした!? あんた、もしかして怪我しているのか?!」

 泣きだした私に慌てて、素っ頓狂な勘違いをする優しい君に、やっぱり、変わっていないと感じた。
 待っていて、必ず救いだすから。君が私を救ってくれたから、今度は私の番だから。

 諦めずに声をかけるから、いつかは絶対に応えてね。…ティーダ。

君の声 End お題配布元:猫屋敷

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