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黄昏の君(012 310)
 夕日に染まる君はとてもきれいだった。

 もう夕方になるのにティーダが戻ってこない。ティナが心配そうに言うから僕は探しにいく事にした。

 「まったく、協調性がないんだから…」と文句を言いつつ、ティーダがいない状態の僕らでも同じ事が言えたので強くは言えない。
 初めて召喚された時から宿敵との戦いは決定させられていたし、それ以外の関わりは持とうともしなかったから。ティーダが来て初めて、僕たちは仲間を知ったと言っても多言ではない。

 いつもティーダといる保護者三人組(フリオニール、セシル、クラウド)、ティーダの遊び相手になる事が多い三人組(バッツ、ジタン、スコール)、そして、リーダーにも聞いたけどティーダは来ていないという。
 彼らも心配そうにしていたから、その言葉にウソはないと感じ取った。

 仲間からの情報を全て聞き終えた僕は頼みの綱である元の世界でのティーダの仲間で、召喚士の女性、ユウナにティーダが行きそうな場所を尋ねた。
 ユウナはほんの少し考えたかと思うとぽんと両手を叩いて答えてくれた。

「ティーダなら、湖に居ると思うよ。ティーダは水が好きだから」

 それを聞いた僕はユウナに「ありがとう」というと、近場の湖を重点的に探す事にした。

 幾つかの湖を回り、ようやくティーダを見つけた。彼は腰辺りの水深でぼんやりと立っていた。
 「なにをしているんだ」とか、「心配させるな」と言いたかったけど、ティーダの姿を見たら言葉が出てこなくなった。

 水につかってぼんやりとした輪郭になった足腰は水から上がる事を許されない人魚の足のように見えて、太陽が落ちる光に照らされたティーダは赤く燃えて、夜の海の中に消えてしまいそうだった。

 僕は不安になって「ティーダ」と呼んだ。その声が案外大きくなったのには自分でも驚いたけど、それのおかげでティーダは僕に気づいてゆっくりと近づいてきた。
 ティーダが近づくにつれてぼんやりとしていた足も実体を持つ。ああ、よかった。彼は人魚じゃないんだと思うと無性に安心した。

「えっと……オーヴ? よくここが、分かったね」
「どうしたって…。ティーダこそ、今何時か分かっているの? ティナたちが心配していたよ」
「あ、もうこんな時間…。夕日に見惚れていたら、時間忘れてた」

 記憶を失ってもへにゃりと同じように笑うティーダが儚げに見えて、僕は「ばか」と一言言うとティーダに抱きついた。
 自分の身長はティーダの腰よりも少し高い位置までしかないから、完璧に僕の服は濡れてしまう。ティーダも「濡れるよ」と言っていたが構わないと思って僕はティーダに抱きついたままだった。

 その後、ティーダを連れ帰ったら保護者三人組にティーダは心配されまくっていた。水に濡れた服を換えるためにテントに戻り、皆の輪に戻るとティーダはバッツやジタンと楽しそうに談笑していた。

 この時のティーダにはもう、あの時の儚さは感じられなくて。少しだけ安心した。
 その後、バッツが作った暖かいスープは冷えた体にはとても優しく、体が温まった。

黄昏の君 End お題配布元:猫屋敷

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あきゅろす。
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