俯く君(013 810)
ある日、スコールは自分の部屋で武器の手入れをしていた。
いつも一緒に行動しているバッツとジタンは自分と違ってテンションが高すぎるため、スコールは時折、独りになりたくなる時がある。
そんなときはリーダーに申し出て、聖域の留守番を回してもらう事にしている。
留守番ならばバッツやジタンも容易には誘わなくなるため、スコールは気兼ねなく一人の時間を取る事が出来る。
スコールはガンブレードのリボルバーをセットし直すと弾を抜いた状態でカチリ、と鳴らす。それが武器の手入れ終了の合図というようにスコールは手入れ用の道具を片づけて部屋から出た。
スコールが留守番をしているため、聖域には誰もいない。今日はカオスやイミテーションの襲撃もなく、騒いでいる張本人たちがいないため、いつもよりも静かな聖域をスコールは足の向くまま歩いていた。
足の向くまま歩いていると、聖域で一つの影を見つけてスコールは立ち止まる。スコールの見つけた影は足を抱えて座っている。足を抱えて座っている影の正体はティーダであった。
いつものティーダは、バッツやジタンと悪ふざけをしていたり、フリオニールやセシル、クラウドに甘えていたり、オニオンやティナとお茶をしていたり、リーダーと手合わせをしていたりなど、一人でいる事がない。
むしろ、ティーダは誰かと居ないと存在がとても希薄になる。現にスコールもティーダが戻ってきているなんて知らなかったからだ。
スコールは足を抱えているティーダにそっと近づき、様子を見る。
足を抱えたティーダは顔を足の間に埋めており、その表情を確認する事は出来ない。
身動き一つしない事にほんの少しだけ心配を覚えるが、彼の肩が上下に揺れていたことから、彼は寝ているだけだと判断する事ができ、内心安心した。
独りにならないとできないことも全て終わらせていたため、スコールは退屈まぎれにティーダの隣に座る。
前にフリオニールから「ティーダはとても寝像がいい」と聞いた事がある。
スコールのイメージではティーダは大の字で寝て、いびきでもかいていそうだと思っていたが、うたた寝でもこのような体勢ならば、寝ている時も似たような体勢になのだろう。と考えていた。
空から柔らかく降り注ぐ太陽の光が、ティーダの髪に反射して、キラキラ光っている。スコールは思わずそれに手を伸ばしていた。
ティーダはよほど眠りが深いのか、スコールが髪を触っても顔を埋めたまま微動だにしない。
…それがなんとなくさびしい。スコールは無意識のうちにそう思っていた。
こいつに、俯いた顔は似合わない。こいつはしっかりと顔を上げて、前に進む奴だから。
俯く君 End お題配布元:猫屋敷
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