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輝く君(013 710)
 命の輝きに溢れる君は、とても眩くて直視できない。

「クラウド!!」

 遠くから自分を呼ぶ声が聞こえて、クラウドは手入れをしていたバスターソードを安全な場所に置く。
 クラウドがバスターソードを置いた瞬間、クラウドの肩と背中に重みがかかる。その重みの正体はティーダであった。

「どうした、ティーダ」
「ふっふーん。ちょっとかまってー」

 かまって、かまって、と擦りよってくるティーダにクラウドは表情を綻ばせて自分の肩に乗せられた頭を撫でる。
 その様がまるで飼い主と大型犬みたいだとクラウドは一人想像して、また笑みを深くした。

 クラウドに頭を撫でられているティーダは気持ちよさそうに目を閉じる。
 クラウドの手にティーダがすり寄った時、キラキラと光る金の髪がクラウドの手に絡まる。

 自分のような生来の金髪と違い、ティーダの髪は脱色によって変化したものらしい。
 だが、父親のジェクトは黒々とした色を保っていることから、もしかしたらティーダは母親似の柔らかい髪質なのかもしれない。

 傷んでいるかと思われた髪はとても柔らかで腰がある。やはり、髪の手入れを入念に行うのが今時の少年なのかもしれないと思うと、手入れを一生懸命しているティーダを想像して、また笑った。

「そう言えばさー…。クラウドって、いつも俺と居る時に笑うよな。なんでっスか」

 ことんと首を傾げたティーダが可愛くて仕方がない。クラウドはティーダの頭を撫でる手を止めずに呟いた。

「そうだな…。ティーダが俺の知る誰かに似ている、というのもある」
「似ている…。…その言い方、ほかにも理由があるっスか?」

 似ている、と言った瞬間、ティーダの顔が微妙に曇る。だが、その後に続いた言葉の意味を汲み取ったティーダはさらに質問を重ねた。

「上手くは言えないが、ティーダはとても輝いているように見える」
「輝いている? 俺が??」
「ああ。その輝きは多くの人に希望を与える、救いの光…。それを見ているみたいで安心する」

 きっと、ティーダも元の世界では多くの人に希望を与えていたのだろう。
 沢山の人に囲まれて、キラキラ、キラキラ輝いているティーダはどれだけ綺麗に見えるのだろう。

 過去に縛られて、夢も希望さえも見えずに、漫然と戦い続けていた自分に降り注いだ希望の光。
 それを今は、独占できている。という黒い感情も手伝っているのかもしれない。

 でも、この輝きは多くの人に降り注いでこそ、真の輝きを放つ。
 だから、クラウドは光を独占しない。ただ、輝いているティーダを見るだけで満足するのであった。

輝く君 End お題配布元:猫屋敷

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あきゅろす。
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