たぶん(風也→遊馬)
この感情は、もしかして…
「さあ、遊馬。好きな所でくつろいでいてよ」
「うわーっ!すっげー広い部屋!!」
おじゃましまーす!と元気よく声を上げて、遊馬は風也の部屋へと入る。
なぜ遊馬が風也の部屋にいるかというと、風也が遊馬を家に招待したからであった。風也の母親も遊馬なら、と許可をくれた。
初めて友達を家に上げる風也はドキドキしながら部屋に遊馬を通す。自分の部屋なのに、まるで借りてきた猫のようだ。
部屋の掃除は常日頃からしているが、遊馬がくると分かった前日は気合を入れて掃除をしていた。
遊馬は風也の部屋を見ながら、風也は綺麗好きなんだなとか、俺も風也を見習わなきゃなーとか他愛のない言葉を発して床に胡坐をかいて座る。風也は遊馬の隣にさりげなく座った。
他愛のない話をしていたら、風也の母親が菓子とジュースを持ってきてくれた。遊馬がお礼を言うと風也の母親は優しい微笑みを浮かべて「風也をよろしくね」と言って部屋から出ていった。
最初の頃はあんなに毛嫌いをしていたのに、やはり遊馬には相手の警戒心を解く特別な力があるのではないかと風也は思った。
他愛のない話が発展して、遊馬の学校での話になる。
遊馬は学校で行ったかっとビングという挑戦談(殆ど失敗談だが)を語ってくれる。
風也はそれが面白くてついつい笑ってしまい、遊馬はいつも頬を膨らまして拗ねたような表情を見せる。笑う遊馬も可愛いが、拗ねる表情も可愛いと風也はいつも思ってしまう。
そして、そのかっとビングの話もデュエルの話になると遊馬は俄然目を輝かせる。
遊馬のルビー色の目も好きな風也であったが、デュエルの話をしながら輝く目は、初演のロビンの時のように、いやそれよりも不快な感触に心がざわついた。
「それでさー。今日も鉄男とデュエルをしてまた負けちまってさー。『いつもお前は詰めが甘い。トンマ』ってアストラルが詰(なじ)ってくるからさー。まぁ、俺が弱いのがいけないんだけどさ。やっぱり悔しいぜー」
デュエルの話をしている時の遊馬はよく、自分以外の名前を口にする。
遊馬の友達なのだろうが、風也は遊馬の口が自分以外の者の名前を発しているだけで胸がとても苦しくなった。
自分以外の者と話してほしくない、そう思った瞬間、風也はこの感情に思い当った。
「(まって、これじゃあ僕は…遊馬に恋して、嫉妬しているんじゃないか…)」
ずっと前に試験的に演じた事のある少年の役。その役はある一人の人気者の少女に恋をして、少女の周りにいる者に嫉妬した少年が、少女の周りにいる者を一人ずつ消していくという役柄であった。
その後にロビンの役が決まったためにその役をすることはなかったが、風也はそこで嫉妬の感情を学んだ。
遊馬に抱いたものは、たぶん恋心。それと同時に嫉妬を経験した風也はこの感情をどうすべきかと悩んだ。
たぶん お題配布元:ひよこ屋
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