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雪(アストラル+遊馬)
空から舞い降りてくるのは、冬の使者

『遊馬、あれはなんだ』

異次元(アストラル世界とやら?)から来た青白い生命体、アストラルは金と銀の目を窓から外に向けながら遊馬に訊ねる。
丁度宿題をやっていた遊馬は訝しげにペンを置いて窓の外を見ると目を丸くする。

「珍しー。雪が降ってるじゃん」
『“雪”?“雪”とはどんな効果だ』
「雪ってのはなー。冬がやって来たってことなんだぜ!」

うわー道理で寒い訳だぜーと呻く遊馬をしり目にアストラルは窓を擦りぬけて外に出る。
アストラルは手で雪をつかもうとしたが、実体のないアストラルの身体を雪は透過していった。

「アストラル!何やってんだよ!!寒いだろー」
『“寒い”?私には寒いという感覚はわからないが…』
「だーかーら!見ている方が寒いっての!!」

サッサと入れ。といわんばかりに遊馬は窓を開けてアストラルを手招きする。
彼は部屋の中にいる筈なのにどうして見ているだけで寒くなるのか。
観察結果その三十七、『遊馬は雪が降っている時に外に出ると寒く感じる』と記憶して、窓の隙間から遊馬の部屋に入る。

先ほど壁を透過して出ていった者を室内にためにわざわざ窓を開けるなど、不思議な奴だとアストラルは感じた。

すると、アストラルの身体に何かが覆われるような感覚があった。
なぜなら、遊馬は毛布を持ちだしてきて自分と一緒にアストラルを包んだからであった。
遊馬の行動が理解できないアストラルはきょとんとした表情で遊馬を見る。
遊馬はというと寒い寒いと言いながら手足を擦り合わせて毛布にくるまっている。勿論、アストラルも抱き込んでである。

『何のつもりなんだ?』

アストラルは何気なく遊馬に尋ねる。遊馬はアストラルの問いに目を瞬かせてから答えた。

「こうしたほうが、お前もあったかいと思ってさ!」

お前、見た感じ寒そうだもんなーと呟きながら、遊馬はアストラルにすり寄る。まるで、暖を採ろうとしている猫のようだ。
自分にすり寄っても熱なんて感じないはずなのに、と思っていたアストラルだが、急に胸の内に火が付いたような奇妙な感覚を覚える。それは遊馬が擦りよる毎にどんどんひどくなる。

『これが…“温かい”…?』

いや、胸を焦がしてしまうようなこの感情に前に遊馬が教えてくれた“温かい”という言葉は似合わないと思った。
だが、不思議と不快を感じないアストラルは遊馬の行動を甘受しながら暫く雪を眺めていた。

彼らの行動は降り積もっていく雪だけが知っていた。

雪  お題配布元:ひよこ屋

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あきゅろす。
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