恋敵(亮十←吹雪・吹雪独自)
君が僕の親友の恋人だって分かっていても
「吹雪さぁん!」
トテトテ、という効果音が付きそうな足音。明日香や、他の女の子とは違う幼さを含む可愛さを持つ子。遊城十代。
「吹雪さん!俺とデュエルしてくれよ!」
僕は二つ返事でOKを出した。君とデュエルできるなんて光栄だよ。いつだって、相手になってあげたい。
僕は行方不明になって、しばらくは記憶を思い出せず苦悶していた。そんな時も明日香や亮は僕に付き添ってくれて、感謝している。
そして、その亮や明日香についてきていたのが十代君だった。
僕にしては珍しく、初めてみた時から可愛い子だなぁ…と思っていた。
それに、十代君は僕を崇めるような瞳では見ない。
真っ直ぐで、本当の僕を見ているような瞳。その瞳に釘付けになった。
そして、何かと僕に話しかけた十代君。デュエルの事が主だったけど、時には勉強を教えてといってきた事もある。記憶が戻っても、僕が十代君を想う気持ちは日を追うごとに募るばかりだった。
そんな時、僕にバッドニュースが舞い込んできた。
十代君と亮が、付き合っているという事。
まさか、デュエル一筋の亮が恋人を持ったという事にも驚いたけど、その恋人が、僕が思いを寄せていた遊城十代であったという事にも驚いた。
僕は表面では平静を保ちながらも、心の中では悶えていた。
十代君はもう、亮の物なんだ…僕はとてつもなく泣きそうになった。
だけど、僕にチャンスが回ってくる。それは、亮が今年、卒業する事。
僕は二年近く行方不明であったため、二年の留年が下された。という事は、その二年間を十代君の近くで過ごす事ができる。
既に誰かの物になっているのならば、君をその人から、奪うまで。
僕の心の中の悪魔が囁く。僕はその言葉を甘受した。
亮、君はこれから僕の恋敵だ。僕もまた君の恋敵になろう。
恋敵
(たとえ親友であったとしても戦おう)
(たった一人の、女性の愛を得るために)
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