戻らない温もり(亮十・亮独自 ※死ネタ)
手の中の君は、氷の様に冷たくて(※死ネタ、DAではなく、普通高校に通っている設定)
その日の夕方、俺と一緒に帰っていた十代は鞄を探ってある事に気が付いた。
『あ、いけね。忘れ物した』
『今から…戻るのか?』
今はもう夕闇。闇によって視界が悪くなる、危険な時間帯。
『ああ、週明けまでに完成させなきゃいけない課題だし』
『一緒に、行こうか?』
『いいよ、いいよ。俺一人で行けるって!』
亮はそこで待っててよ。と言い、十代は学校へと走って戻った。
その時、もしも俺が付いていっていたなら…後悔の念は耐えなかった。
走っていった直後に後ろから聞こえてきたブレーキ音と鈍い音。
俺はとっさに振り返ると、そこには真っ赤な車。真っ赤な車のドライバーは、そのまま車に乗って逃げ去った。俺はとっさにナンバープレートを覚え、車のいた場所に目を向けた。
そこにあったのは、真っ赤な血の海。中央にいたのは、十代。
俺は呆然としていたが、すぐに救急車と警察を呼んだ。
そして、十代に駆け寄る。目の前の血の海は、十代の体から出た血だった。
俺は必死に十代に呼びかけるが、返事はない。その間にも、十代から滲み出る血液によって、俺の手は血で染まっていく。
俺は、これ以上出血しないように止血作業を懸命に行った。だが、その中で十代の体は、どんどん冷たくなっていった。
その後、救急隊に運ばれた十代だったが、蘇生の甲斐なく息を引き取った。
死因は衝突による頚椎骨折で、即死だった。俺の情報によって、轢き逃げ犯は捕まったが、十代は戻ってこない。
十代の葬式には、十代と親しかった者が多数参列した。誰もが十代の死を悼み、涙を流していた。
俺は棺の中に眠る十代の頬を撫でた。俺の手には氷のように冷たい感触だけが残った。
戻らない温もり
(いくら抱きしめても、いくら呼びかけても)
(戻ってこない、君の温もり)
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