ようやく、掴まえた(亮十)
十代が行方不明になった。その事を聞いたのは、病室だった。(※ 捏造)
「それは…本当なのか?」
俺たちは異世界に残ったヨハンを探すために、十代と共に向かった。
だが、十代は仲間の言葉によって傷つき、そして、覇王が現れた。
覇王とも何とか和解し、俺たちは異世界から帰る事ができた…筈だった。
十代の姿がどこにもない。翔が意識を取り戻した俺に伝えた事であった。
もしかしたら、ヨハンのように異世界に残ってしまったのか。そう思うと、俺の血の気は一気に下がっていく。
俺はいても立ってもいられなくなり、軋む体を押して外へと出た。
コートを着てもまだ肌寒い外で、俺はDA内を探し回った。
十代がいつも行きそうな場所、全てを回った。
購買、食堂、寮、屋上、教室、図書室…その全てに、十代はいなかった。
そして、最後の希望をかけて、俺は海岸へと向かった。
十代はある異世界から帰ったとき、海岸に打ち上げられていたという事を異世界に行くほんの少し前に聞いた。
だが、期待も空しく、静かに波が打ち寄せるだけで何もいなかった。
「十代…」
俺は呆然と砂浜に立っていた。俺の目の前が闇に包まれそうになった。その時だった。
空に一筋の流星が流れる。その流星はこちらに向かってくる。
流星は俺の目の前の波打ち際に落ち、俺は目を丸くした。
流星が落ちてきた事にも驚いたが、それよりも驚いた事が目の前にある。
その流星の中に、一番渇望しているものがいた。
「うぅ…やっぱりネオスの力を使っても痛ぇ…」
大丈夫か?ともう一つの影を抱き起こしていたのは、探していた者で、愛しい人。
「十…代…?」
その声に十代は、顔をあげて俺を見つめた。一瞬驚いた顔をしていたが、俺に優しい微笑みを浮かべ、言ってくれた。
「ただいま…亮」
俺は思わず、十代を抱きしめた。十代もその抱擁に嬉しそうに微笑んでいた。
ようやく、掴まえた
(いなくなった君を、やっと、掴まえる事ができた)
(もう二度と、君の手を離さない)
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