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茜空(亮十・亮独自)
 光を闇で包むような 空の色

 夕焼け空を見ていると、思い出す人がいる。

 この空のように、真っ赤な服を靡かせて、大きな瞳は全てを見透かすように純粋で、優しい闇を宿す心は強く伸びやかで…。でも、本当は寂しがり屋で、目の前の空と同じような共通点を多く持っている。

「カイザー?」

 俺が振り向くと、そこには十代がいた。

「俺が来ても考え込んでいるなんて」

 十代はすとんと波止場に座り、俺とともに夕焼け空を眺める。

「カイザーってさ、夕焼け空が好きだったりする?」

 どうして、唐突にそんな事を聞くのか。と尋ねると、

「とっても嬉しそうに眺めていたから」

 俺も好きなんだ、夕焼け。と十代が言うと夕日を眺め始めた。

「不思議だよな。何で人は夕焼け空に惹かれるんだろう?」

 珍しく哲学的な発言をした十代に、俺は目を丸くした。
 十代の言葉に俺は考え込む。考えた事もなかったからだ。考え込む俺の傍らで、十代も考えているようだ。

「あ、分かった!」

 十代の素っ頓狂な声に、俺は十代の考えを聞くために身を屈める。

「夕焼けは昼と夜の間で、光と闇が仲良しだからじゃないかな?」

 十代は名案が思いついたかのような、嬉しげな瞳で俺を見つめた。

 光と闇、それは対立する存在。常に争い、戦いあう者同士。
 常に水と油のように交わる事の無い存在だが…

 この夕焼け空は違う。

 光はゆっくりと闇に包まれ、闇は光を優しく包み込む。
 互いに争わず、ただ、ゆっくりと調和していくだけの景色。
 それに人は安心感を覚えるのではないか、それが十代の見解であった。

 確かに、ありえなくも無い。と言うと十代は誇らしそうに顔を綻ばせた。

 十代は再び夕焼け空を見上げた。その表情はどこか嬉しげで、儚げで

「俺、夜明けの空も好きだけど、夕焼けの空の方が好きかも」

 俺は十代の言い方にクスリと笑った。俺も、夕焼け空が好きだ。
 なぜなら…夕焼けの空は、愛しい十代を連想させるから。

茜空
(光を優しく包み込む優しい闇)
(それは愛しき人ととても似ていて)

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