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魔法少女リリカルなのはA's+
A3
少女が家を出てから2時間。魔法学校に到着するまでに要した時間だ。
バスを乗り継いで首都クラナガンへ到着するまで1時間、快速レールウェイに乗り更に1時間。往復4時間の大移動。学校は好きなのだが、少女はこの移動時間だけは一生好きにはなれないだろう。

「ふぅ・・・やっとついた・・・」

朝の陽気がすがすがしいはずなのだが、少女にはどよーん、と得体の知れない虚脱感が伺われる。

「あさっぱらからなんて空気を振りまいてるのよ!」

「――ぷぎゃっ!!?」

背後から何者かに張り飛ばされ、ズザーっと効果音を撒き散らしながら、地面と仲良しになる。それはもう世界中の誰もがうらやむほど濃厚なディープキスだった。
絶対やりたくはないが。

少女は大地に寄り添ったままぴくりとも動かない。

「・・・あれ?・・・おーぃ・・・アルー?・・・・・・やりすぎちゃった?」

エヘッ!と可愛く微笑む張り飛ばした張本人。
悪びれた様子は全くない。

「・・・もー、いつまで寝てるのよー?早くおきないと蹴り飛ばしちゃうぞっ?」

またもエヘッ!と可愛く微笑む。今度はウインクつきで、星がパッと見えた気がする。
そこで地面と友達以上恋人未満な関係になったクアルテットに変化が訪れた。
ピクピク動き、身体をフルフル震わしている。

「・・・うわっ・・・なんか・・・きもっ・・・」

その一言がクアルテットの肉体を限界にまで覚醒させた。今なら何にだってなれるだろう。

「―――っ!こーろーんー・・・」

「おっ・・・やっと起きたねっ!・・・あれ・・・?」

のそりと立ち上がったのを見てコロンと呼ばれた少女はニパッっと笑うが、クアルテットの姿にただならぬ気配を感じ後ずさる。

「握力×体重×スピード=破壊力っ!!!」

「えっ!?ちょ!まって!!なんかその方程式聞いたことあるよっ!?謝るからっ!魔力球ぶつけたの謝るからっ!!」

「うるさーいっ!しにさらせー!!」

後にコロンは語る。この時のクアルテットの背中には切り刻まれた入墨が見えた、と。
それが何だったのか定かではない。



*****



校門での一騒動を終え、今は授業中。クアルテットは一番後ろの窓際の席で教壇に立つ若い女性の話に耳を傾けている。

「はーい。次は魔導師のシンボルでもあるデバイスについてのお話しです」

デバイスという単語に反応して、クアルテットの表情がより真剣なものへ変わる。

「デバイスには今現在で確認されている種類が全部で3つあります。
魔法の発動の手助けとなる処理装置、状況判断を行える人工知能を搭載したインテリジェント。
処理速度が速く、魔法の発動を自分で決定しないといけないけど、術者が優れていればより高速かつ確実に魔法を発動できるストレージ。
武器としての性能を重視したアームド。
これは魔力の籠もった弾薬を消費することで、一時的に多大な能力を発揮する事ができます。その弾薬を取り込むのがベルカ式カートリッジシステム。
ベルカによって開発されたデバイスで、ミッドチルダ式のインテリジェントデバイスを極端化したような物がユニゾン。
これは製品化はしてないのだけど、何故製品化しなかったかは後で話しましょう。以上で解らない所や疑問に思った所はありませんか?」

「はい!」

待ってました!と言わんばかりにクアルテットが手を挙げ、席を立った。

「あらあら、ではクアルテットさん」

「お話しをきいてて思ったんですけど、ベルカ式カートリッジシステムなんてべんりな物があるなら、なんでみんな使わないんですか?」

その質問に難しい表情をした先生は、言葉を選ぶように慎重に話し始めた。

「・・・んー、いい所に気がつきましたね。確かにカートリッジを使用すれば一時的とは言え爆発的な魔力を得ることが出来ます。
ですがそれはあくまでベルカのシステムであってミッドでは安全性の確保も出来てません。むしろミッドでは危険性の方が格段に高いんです。たとえばカートリッジ使用時に掛かる負担や、爆発的に増えた魔力のコントロールミスなど様々あります。ですからクアルテットさん、間違っても手を出してはいけませんよ?」

先生の言葉になるほどと、納得したように頷きイスへ座りなおす。
「うー…」

危険性を理解してもなお、少女の頭はカートリッジシステムの事がぐるぐる回っていた。なにかこれは知っておかなければいけない様な、憶えておかなければいけない様な。クアルテットは虫の知らせめいた奇妙な感覚に襲われていた。

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