魔法少女リリカルなのはA's+
D4
「……ご主人は、なのはちゃんから何を言われても、なのはちゃんと……皆と戦える、ですか?」
それは何気ない一言のようで、かなでを試す一言。
「……ご主人は迷っているように見える、ですよ」
その言葉にかなでは驚いた。
「……大丈夫。迷ったりしない」
なだめるように言うかなでに、不満そうにうなずくエセルドレーダ。
エセルドレーダは気付いていた、迷ったりしないと言ったかなでの拳が、きつく握り締められていたことに。
*****
結局なのはを見つける事が出来なかった僕は、このまま家に帰ってしまうのが勿体無くて、臨海公園へ足を向けていた。
あの公園には一度行ってみようと思ってたんだ。
臨海公園に到着して、夜に浸かっているだろう深い海に顔をむける。
なにかこの公園と海には色んなドラマがあるような気がして、目を瞑り、どんな事があったのか想像を膨らませた。
ゆっくりと時間がながれる。
――かなで、ちゃん……?
なのはに呼ばれた気がして、きびすを返す。
********
「かなで、ちゃん……?」
そこには不安そうな目でかなでを見つめているなのはが居た。
近くに感じるなのはの気配に驚く事もなく、自然とそれを受け入れる。
まるでこうなる事が始めから解っていたように。
かなでの顔を見たなのはは泣いたように微笑み、胸へ飛び込んだ。
「なのは、久しぶりだね」
「かなでちゃん!会いたかった、会いたかったよぅ!」
「僕も、会いたかったよ」
「いきなりあんな事になって、敵同士になって、皆の前からいなくなって……私、友達なのにかなでちゃんの事なんにも解らなくてっ!」
なのはが必死に紡いだ「あんな事」とは、五日前の戦闘の事。
『嘘……なんでかなでちゃんが』
友達を悲しませてしまった記憶。
かなではあの時の最悪な気持ちと、なのはの顔を一生忘れる事は出来ないだろう。
「ごめん、なのは」
「だから聞かせて……?あなたの、かなでちゃんの言葉でっ」
その言葉にどれ程の思いが込められていたか、測る術はない。無いのだが、通じるものがあったらしい。
かなでは胸の中に居るなのはに確かめる。
「僕の話しを聞いてくれる?」
「……うん。かなでちゃんの話しが聞きたいの」
「じゃ、とりあえずベンチにでも座ろう。いい加減なのはに抱きつかれたままじゃ、僕の足が悲鳴をあげる」
「わ、私そんなに重くないよっ!?」
言いつつ、慌てふためきかなでから距離をとる辺り怪しさ満点だ。
「……体重気にしてたの?」
「気にしてないよっ!?」
「……うん、まぁ、体重の事を言ったんじゃ無くて、五日間寝たきりだった上になのはを探し始めた時に全力疾走したから、いい加減限界だったんだ。」
「かなでちゃん寝たきりだったの?私の五日間って一体……あ、でもかなでちゃんも私を探してくれたんだ?嬉しいなっ」
エセルドレーダに引かれベンチへ向かうかなでに並び、なのはは笑い掛ける。
だがなのはは知らない。
隣を歩く盲目の少女が心の中で『さっきまで諦めてたなんて死んでも言えない』と思っているなんて。
「あ、まぁ、えっと、うん、アハハハ……」
「?顔が引きつってるよ?にゃはは、相変わらず変なかなでちゃん」
この瞬間、確かに二人は小さな幸福を感じていた。
一人は素直に受け止めた。
一人は気付かない振りをした。
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