魔法少女リリカルなのはA's+ A7 「間に合えぇええぇええええっっっ!!」 カートリッジシステムにより賭けは負け、牽制も出来ない状況に追い詰められた僕は魔法を発動するために、足りない魔力をカートリッジ二発で瞬間的に満たす。 これは一瞬の閃き。 クロスレンジは近くなればなるほどシールドが介入するスペースが無なくなる。 更に肉薄してきたヴィータにシュネーヴァイスの尖端を押し付けた。 何もしないで落とされる位なら自分がどうなろうとヴィータを落としてやる。 そうすれば僕が落ちようが落ちまいがエセルドレーダに負担が掛かるのは避けられる。 しかし僕の意図に気付きながらもヴィータはデバイスの勢いを殺さず、更にカートリッジロードを一回。 僕の魔法が発動するより微妙に早く到達したラケーテンハンマーは左肩に直撃。肩部の装甲は抵抗虚しくぐちゃぐちゃに破壊された。 それだけでは収まらず着弾点が魔力の爆炎となって僕に牙を剥く。 その間は一秒に満たない。 遅れて零距離からヴィータの腹に魔力砲撃が迸る。 これが閃いた策だったのだが、確実に落とせたはずのソレはラケーテンハンマーの直撃により中心からズラされ、ヴィータの脇腹を抉りながら地面へ吸い込まれていった。 爆炎と砲撃の余波が地に落ちた雪を再び舞い上げる。 「うぁっ…!」 「ぐっ…!」 舞い上がった雪の中、どちらも後ろに引っ張られるように滑空する。 「…いてて…強いな…赤いの。でも…そろそろ限界じゃない?」 「ヴィータだ…てめーも…つぇーな。…えーと…なんとかカルテット。 ラケーテンハンマーとフランメシュラーク喰らわせたんだ、てめーこそ限界じゃねーか?」 息を切らせ脇腹を抑えながら憎まれ口を叩くヴィータをみて思わず苦笑する。 「はぁ…はぁ……なんだよ?なんか面白いこと言ったか?それともアレか。バカにしてんのか?」 「違う。ヴィータから見た僕の状態は、僕から見たヴィータの状態と同じ様に見えるんだろうって思ったらおかしくてさ」 「ハハッ…違いねー」 戦闘の相性は最悪だ。でもヴィータとする会話は楽しい、なんて思いながらデバイスを構えなおす。 未だに舞い上がったままの雪の先、白み掛けた空になのはとエセルドレーダを見つけた。 あっちはあっちで相性が悪いように見える。 ――ん?ヴィータはベルカの騎士で確定とすれば… 「そういえば赤いの…あの白い砲撃魔導師。あの子が結界を破った?」 「だから…ヴィータだって言ってんだろこのやろー!……なのはか。 なのはの砲撃は一流だよ」 「…そっか。ありがとう」 「…?」 ヴィータは意味不明な質問に小首をかしげている。 なんと言うかヴィータが単純で助かった。 この危機、もしかすると回避できるかも知れない。 『すぐそっちに行く!』 エセルドレーダへ手短に念話をして、急加速。 小首をかしげたままだったヴィータを取り残してなのはとエセルドレーダの元へ急いだ。 「あっ!?アイゼン!!」 完全に遅れたヴィータが焦りながら鉄球を撃つが、身体を一回転して回避する。 すれすれを通り過ぎ折り返してきた所をドライブレイで相殺。 と言うか、射撃魔法もちゃんと使えるじゃないか。 僕はヴィータと差を離したまま、一触即発状態のなのはとエセルドレーダの間へ割り込んだ。 [前へ*][次へ#] [戻る] |