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魔法少女リリカルなのはA's+
01
かなでとなのはが決意を固めてから一日が経過した。


ここはあの日見つけた隠れ家の一室。
美しい黒髪の使い魔、エセルドレーダは来るべき戦闘に備えこれでもかと言うほど弾丸を生産している。

「……ふぅ。これだけ作れば、十分でしょうか……です」

つい先程作り終えた最後の弾丸をマガジンへ詰めながら周囲を見回す。
そこにはざっと10にも及ぶマガジンの山。
全部使いきるとは思わない。
それでも作るのを止めなかったのは次の戦闘こそここ一番の峠と理解していたから。
そしてなにより、追いかけられる様な焦燥に似た胸の内を収めるために何かに集中したかったのだ。

「すこし疲れた……です。」

そう言うやいなやエセルドレーダはベッドへうつ伏せに倒れスースーと規則正しい寝息をたてはじめた。




*********




かなでは落ち着かない気持ちを誤魔化す様に空を仰いだ。

「…………」

最も目は見えないため空を仰ぐという行為にあまり意味は無いのだが。
それでも何もしないよりかは幾分マシだった。
流れる風に降り注ぐ太陽の光。

あの強くて真っ直ぐな子達はもうすぐここにたどり着くだろう。
その時いざ目の前にしても揺らぐ事なく敵になれるだろうか?
否。
何の例外も無く、確実に、完璧に、頑なに。敵にならなければ、悪にならなければならない。

そのためにあらゆる状況での策を練った。敵の人数。組み合わせ。初撃からのコンビネーションetc.
その数、実に100通りにも及ぶ。

未だ戻らぬ記憶に違和感を感じながら、あの子達を倒せば記憶が戻ると信じる。
信じなければこれ以上戦えない。
とうに限界を超えたこの身は信念のみで動いていた。忘れ去った過去に決して忘れてはならなかった何かがあったはず。
そうでなければこんなにも拘る訳が、拘れる訳が無かった。

いつも変わらず眼前に広がる闇を見据える。

「戦わければ、記憶が見つからない」


カチリ。
どこかで歯車が回った音がした。その音は誰の耳にも届く事は無かった。



*********



どんな時も貴女と共にあった。
貴女が喜んだ時も怒った時も哀しんだ時も楽しんだ時も。
だからこそ貴女を蝕む自身が許せなかった。
でもどんなに憤りを感じても所詮造られた命に造られた思考。手足が無ければ己を壊(コロ)す事も出来ない。
私はただこの世に生を受けたその日から貴女の幸せだけを願っていたのに。

だから、貴女になら壊(コロ)されても良かった。
でも貴方は、私を使えば貴女が壊れていくのに私を壊(コロ)そうとはしなかった。
それが可笑しくて、滑稽で、酷く愛らしく感じてしまった。

ドクも
グランピーも
ハッピーも
スリーピーも
バッシュフルも
スニージーも
ドーピーも
皆貴女に意義を貰った。
我等は、貴女を阻む全てを退けると誓おう。
我等は、貴女が想う全てを護ると誓おう。

……ただ、忘れないで。
手足の無い私には貴女の真意が理解できても、貴女を止めることが出来ないということを。




*******





管理局の対応は遅れていた。
本来ならばデイブレイク・カルテット捕獲のため、特別チームが編成されていてもおかしくない。
にも関わらず今だ上からの指示は無く、現状を維持するしかない状況。
管理局の実態を理解していてもこの対応の遅さには納得がいかないのか、クロノ・ハラオウンは執務室のソファに深く腰を沈め息を吐き出した。

「……自分の好きなように動けないのは、組織に身を置く者の運命か」

半ば諦めにも似た声色に、返ってくる言葉は無い。
部屋に一人しか居ないのだから当然といえば当然なのだが、クロノは若干の寂しさを覚えた。
寂しさを紛らわすように意識を別の方向へ向ける。

「なのはとデイブレイク・カルテットが衝突する前までに指示がくればいいのだが」

クロノは優しい。
なのはにああは言ったものの、やはり心配なのだろう。
デスクの上にある、うんともすんとも鳴らない電話機に視線を落としながら何度と無くついたため息を再び漏らした。








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あきゅろす。
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