魔法少女リリカルなのはA's+
A2
アースラへ移ってすぐクロノは間を置かずに会議室へなのはを通した。ソコにはあらかじめ連絡を入れて置いたのか、エイミィが既にスタンバイしていた。こういった対応の迅速さは流石エリートと言った所か。無駄な時間が全く感じられない。
「さて、デイブレイク・カルテットの件だが。エイミィ、モニターに出してくれ」
「はいはい……っと!」
声が掛けられると同時に巨大なテーブルの中心に設置された機材から空間モニターが出現し、かなでのプロフィール画面が映し出される。
「不自然に消された跡があったから苦労したけど、コレがあたしが調べた情報のまとめたヤツね。
本名クアルテット・クロイツ。出身地はミッドチルダで比較的平凡な家庭で育ってるみたい。父は元技術開発局副官でかなでちゃんが生まれてから地方に移ったって……」
「待ってくれエイミィ。両親の話は必要なのか?」
その質問にエイミィはムッとしたように唇を尖らせながら人差し指をあげ、腰に手を当てた。
「クロノ君は先を急ぎすぎ。必要だから話してるのだよ!」
「……あ、あぁ、話の腰を折って済まない。続けてくれ」
全く。と言った風にワザとらしくため息を吐くと改めて咳払いを一つ、話に戻った。
「にゃはは……」
なのはの独特な苦笑いに相変わらず仲いいなぁとニュアンスが掛かっていたが、二人は全く気付かなかったようだ。
「移った先でかなでちゃんのお父さんはフェイトちゃんのお母さん、プレシア・テスタロッサの下でプロジェクトFに加担してたみたい。
そうしてかなでちゃんが魔法学校に入学してすぐに事件が起こったの」
「否定派の集団による研究所襲撃。表には出てないみたいなんだけど、結構大規模な事件だったみたいでプレシア以外の研究員多数とその場に居合わせた一般女性1名が死亡。
一般女性ってのはかなでちゃんの母親で、この事件でかなでちゃんは両親を二人同時に亡くしたんだよ。
で、かなでちゃんはこの事件後行方不明ってことになってるのね」
「・・・んでこれはあくまで仮定なんだけど、その時襲撃した雇われ魔導師に何らかの理由で連れ去られた可能性が高いの。
データによると魔導師集団のリストの中にかなでちゃんと酷似した特長の人物が掲載されてたから、多分間違いないと思う」
「そうか。そんな出来事が・・・。と言うかその情報量で不服なのか?ほぼ完璧だし、ここまで行くと収集オタクだな」
何故か疲れたように肩を落としたクロノにエイミィは含み笑いをしながら口を開く。
「んー?ついでにクロノの恥ずかしい秘密でも語っちゃおうかなー」
目が笑っていない。
「ごめん」
コンマ1秒で謝る少年の背中に執務官の威厳は一編もなかった。
そこで話を戻すようになのはが口を開き、感想を述べる。
「でも、もし本当にかなでちゃんがその組織で生きていたならどんな気持ちだったんだろう。きっと……」
「そうだね。それはきっととてつもない苦痛だっただろう。きっとどうすることも出来ない自分を殺してやりたいくらい嫌ったに違いない。
こんなはずじゃ無かった世界に深く絶望したに違いない」
苦しげに呟くなのはの言葉に続けてクロノが淡々と吐く。その一言一言の重さはまるで自身が経験した事を話してるかのようで二人は自然とクロノの過去をフラッシュバックさせた。
「クロノ君」
「あぁ、ごめん。エイミィ。……さて、デイブレイク・カルテットの出生は解った。次は何故管理局に対して憎しみを持っているか、なんだが。その事に関して何か情報は掴んでる?」
気遣う声で何事も無かったかのように態度を一変させた少年にエイミィは深く眉根を寄せ、それでも質問に対しての問いを脳内で構成していく。
つくづく女心の解らない奴である。
それがクロノの魅力でもあるのかもしれないのだが。
「むー。うん、そこなんだけどどうもかなでちゃんが所属していた組織・・・エルドラドって言う組織なんだけどココ最近で抹消されてるんだよね」
「エルドラド・・・黄金郷にして理想郷か。大層な組織名だな」
「そうだね。でもまぁ、実際エルドラドに所属していた人物は元は奴隷だったり、実験体だったり色々と訳ありな人たちばっかりだったから、本当に理想郷だったんじゃないかな?
ここからは完全に推測でしか言えないんだけど・・・。
組織が抹消された時に、かなでちゃんは奇跡的に生き残って管理局を頼らざる得ない状況になった。
逃げ出したかなでちゃんを襲撃者が追撃しないはずがないでしょ?
その内逃げ切れなくなって戦闘。そして相打ちにまで持ち込んだ。
その時に受けたショックで記憶の混乱が起こり、管理局を頼ったはずの感情とエルドラドと襲撃者を憎んだ感情がごちゃ混ぜになって管理局が憎いって勘違いしちゃったんじゃない?」
「エイミィさん、それはムチャな展開な気がするんですけど」
うーん。と頬を掻きながら告げるなのはにエイミィは人差し指を突きたてながら迫る。
一方クロノはというと考える素振りを見せたままフリーズしていた。
誰かクロノを再起動してください。
「甘いよ!なのはちゃん!!このエイミィお姉さんが何の根拠もなしにこんなこと言う訳がないとはおもわんかね!?根拠ならありますよー?ありますとも!」
「にゃはは、じゃ、じゃあ根拠も話してもらえたら嬉しいかなーなんて」
「ふふふ・・・しかたないなぁ、なのはちゃんはー。
っとふざけるのはここまでにして。
情報収集の一環でかなでちゃんが海鳴市にたどり着くまでの足取りを追っていったんだけどね、かなでちゃんが初めに入ったと思われる街のそれほど離れてない場所で魔法戦闘の痕跡が発見されてるの。
わずかに残ってた残留魔力からそこで戦闘していた二人の内一人はかなでちゃんで間違いないんだよ」
自慢げに語るエイミィにフリーズが解けたクロノが更に疑問を投げかける。
「じゃあ聞くが、その現場に居たはずのもう一人はドコに消えたんだ?」
「はぁ、そんな事私に解る訳ないと思わないのかなぁ?
でも実際争った形跡も有るわけだしねぇ。
そうだなぁ……退かざるをえない状況になったか、止めを刺せない程の重傷を負ったって線以外考えられないでしょ。ったく……これだから素人は」
「一応、プロのはずなんだが」
しょんぼりしているクロノを尻目にエイミィは難しい顔で黙り込む少女へ振り返る。
「なのはちゃん」
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