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二人の英雄の物語
『テスト』
講義の終わりを知らせるチャイムが鳴り響く。

「今日はここまで。
各人よく復習しておくように!」

講師が声を張り上げるが、ガヤガヤと騒がしい生徒の渦に掻き消される。

今週の講義はこれで終わりだ、無理もない。
騒がしい奴らは、これからどうしようか話し合ってるんだろう。

僕には無縁な喧騒だ……さっさと帰ろう……

僕は鞄を持って講堂の扉をくぐっ……

「オラ!邪魔なんだよ!」

「うわっ!」

後ろからいきなり衝撃が襲う!

慌てて手を出したから床と衝突する事は無かったが、後一歩遅かったら鼻が縮むところだった……

「とろとろしてんじゃねぇよ!」

ズボンについた汚れを払いながら立つと、目の前に一人の男子生徒が偉そうに立っていた。

「なんだよ、スヴェル。
文句あるのか?」

男子生徒は立ち上がった僕の前に立ち、胸倉を掴んできた。

その容姿に違わずなんとも低脳な行動だ……
相手をするのも疲れる……

「別に?邪魔な物があるなら退ければ良いじゃないか」

そう言って、僕は男子生徒の手首を掴み身体の内側に捩り込む。

「うぁっ!!」

関節の構造に従い、不様な姿で盛大に倒れる男子生徒。

そういえばこの生徒の名前、なんだっけ?
……………………まぁ、たいした事では無いしいいか。

そんな事を考えながら、トドメの肘落としを前頭部に一撃。

「ガッ!!………………」

ふぅ……やっと静かになった。

軽い脳震盪ってところか……30分もすれば気がつくだろう。

因みに、僕はそれまで待ってやるほど出来た人間じゃない。

「……帰るか」

「ちょっと君!」

僕が家路に付きかけた時、一人の男が駆け寄って来た。

アイツは確か……ギルドのサポート係だったハズだ。

ギルドとは、『はぐれ』の討伐やトレジャーハントの斡旋を行う傭兵やハンターによる組合組織だ。

『はぐれ』は、この世に溢れるマナの集合体――精霊が獣や無機物に宿り暴走した、理から外れた存在。

それによって引き起こされる被害を防ぐ為、商業地帯の連中が旗揚げしたのが始まりだそうだが、今やこの大陸全土に広がる程の勢力を持っている。

そのギルドの人間が僕になんの用だ?

「さっきの見てたけど、君強いね!」

「いえ、それほどでも……」

小さく会釈をして称賛を受け取る。

「何か用ですか?」

用件があるなら早くして欲しい。
今日は早く帰って軍に行く準備をしなくちゃならないから。

「うん……実はさ、今クエストの受注者を捜してるんだけど……スヴェル・バルトラインって人、知ってる?」

「へ?」

いや、知ってるも何も僕なんだけど……

クエストの受注なんかしてないぞ?

「僕はクエストの受注をした覚えは無いんですか……」

入隊準備が忙しくてギルドに行く暇すらなかったんだ。

受注してるなら何かの手違いだ。

「え?スヴェルって君?
あぁゴメンゴメン、なら説明するよ」

サポート係は数枚の書類を渡してきた。

「これは軍からの依頼でね。
入隊する人に実力試験的なクエストを受けて貰う事になってるんだ」

「あぁ……入隊テストですか?」

成る程……わざわざ自前で用意せず元からあるクエストをテストに使う。

軍もなかなか頭を使うじゃないか。

「そんなところかな?
君には遺跡のはぐれ討伐とサバイバル生活のクエストが依頼されたんだ。
今までの中でも最高ランクの依頼だよ」

遺跡……?
よりにもよってそんな面倒な所でサバイバルとは……

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