[携帯モード] [URL送信]

二人の英雄の物語
講義
広々とした講堂の中で、この都市の伝承を語る講師の声が響く。

しかし、講師の語る伝承に間違いがあるのに僕は気付いた。

「先生」

挙手で講義を止める。

「そして……ん?
バルトラインか……なんだ?」

露骨に嫌そうな顔で振り向く講師。

恐らくこれから起きる事を予測したのだろう。

「キルバスと名付けられた、とありますが間違いです。
正確にはキルバーニア……古代文法で読めばキスレブが正しい当時の名称です。
街が国家として発展する過程で、各地方の方言と混ざり今の名称に定着しました」

苦虫を噛み潰した顔で僕を見る講師。

「……教えてくれてどうも有り難う……
やはり『天才』は出来が違うな」

「いえ、お手数をおかけしました」

『天才』と嫌味たっぷりに言われた。

聞き慣れた言葉だが、相変わらず嫌な言葉だ。

なまじ頭が良いだけに他の生徒からは線を引かれるし、講師達も自分より頭の良い生徒を快く思うはずがない。

ホントはこんな所に来たくは無いけど、このキルバスに生きている限り『学校』というシステムから逃げる事は出来ないんだ。

その後は軍に入るか、この都市を動かす歯車になるしか無い。

面白くも何とも無い無意味な世界……

何をしても無駄……ならば何も考えず黙々とシステムの流れに身を任せれば良いのだが、その真理に辿り着いたこの頭脳がそれを許さなかった。

「ま、お前も後一週間で軍隊に入るんだ。
盛々その優秀な頭で敵を打ちのめしてくれよ」

講師が僕の肩を叩きそう言った。

.

[*前へ][次へ#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!