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オリジナル小説

それは一匹の猫だった。

黒い体毛はしなやかな身体に相応しい艶を持ち、ピシッと伸ばした尻尾の先から綺麗な三角の耳の頂点までを被っている。

「ニャー」

猫はそう一声鳴くとスタスタと男を追い越して行く。

男がそれを目だけで追っていると、猫は1メートル程離れた所で立ち止まり振り向いた。

その双眸に宿る金色に、この世では無い何か神秘的なものを男は感じた。

「着いて来い……っていうのか?」

男は自分でも何故こんな事を猫に言ったのか理解出来なかった。

だが猫は、

「ニャー」

と鳴くとまたスタスタと進み出した。

(今のは俺の言葉に反応したのか?それとも……)

男が悩んでいると、また遠くで「ニャー」と声がする。

ふと見ると、猫が男を見つめたまま座っている。

どうやらこの猫は男を待っているようだ。

(猫の案内人か……なんだか変な所に来ちまったな)

男は鞄を持つと、猫の後に続いた。

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