幼馴染み
2
あの日のことを忘れるため俺は日々勉強に勤しんでいた。
「無理!分かんねー!」
この数日間にもう何度も吐いた台詞だ。
今日も例に漏れず勉強中……迫りに迫った明日の試験のために。
蒼は手にしていた二年の問題集を机に置き、真横から俺の一年の教科書を覗き込んできた。
「どこが分からない?」
蒼が近付くとふわりと甘いコロンの香りが鼻につく。サラサラの前髪が俺の頬を掠める程に近い。
だから余計、ドキッと胸がザワついた。
いやいやいや!
蒼だしっ!
何で蒼相手にこんな……っ…!
自問自答を繰り返し業とらしくも右手で胸を押さえ込む俺。そんな俺の動作に気付いた蒼は不思議そうな目をして顔を上げた。
「どうした?」
「きょっ、拒絶反応が……っ…」
いい言い訳が思い付かなくて適当なことを言ったら、呆れの色濃い溜息が間近で聞こえてきた。
「訳分かんないこと言ってないで勉強する」
ほら、と机に散らばったノートの一冊を手前に引き寄せてトントンと指先でノートを突(ツツ)く。
俺は渋々ながら視線をノートに移し、蒼から勉強へと意識を切り替えた。
だから、気が付かなかった。
俺が勉強を再開し始めた正にその時。
蒼が俺のことを見ていたなんて――――…。
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